Interview

Fate、まどマギ、テイルズ…名作ゲーム&アニメを支えた作曲家たちの仕事術とは? 梶浦由記×椎名豪スペシャル対談

Fate、まどマギ、テイルズ…名作ゲーム&アニメを支えた作曲家たちの仕事術とは? 梶浦由記×椎名豪スペシャル対談

音楽理論の大切さと音楽を学ぶことの難しさ

劇伴作家として活躍されているお二人ですが、歩んできた道が大きく異なっていて、音楽を学ぶということにおいて決まった道はないかもしれないと思いました。

梶浦 私は音楽の学校などで勉強をした事はないんですが、でもだからと言って専門的な音楽の勉強をしなくていいなんて言うつもりは毛頭ないですよ。勉強はする機会があったら絶対にした方がいいです。ただ、勉強したからできることと、勉強したからといってできるようにはならないことがあるだけだと思います。勉強したことでできなくなることもあるかもしれませんが、知識を持つことで増える可能性の方が絶対多いと私は感じます。そうではない道を通ってきた私のような人間にも道はある、とは個人的に思いますが。

椎名 その通りだと思いますね。でも、勉強って難しいんですよね(笑)。昔、1200円や2000円くらいの音楽理論の本を買いまくりましたが全然理解できなくて。8000円くらいの本を買ってもやっぱりわかりませんでした。本を読むことで少しは知識がつきますが、どうしても肌で覚えなければいけない部分がありますよね。自分の曲に活かせるわけではないとは感じました。

梶浦 ああいう本を読んでいて思いますが、理論を読んで理解できるのは知っている音楽だけですよね。例えば、ジャズをよく聴く人ならジャズ理論を理解できますし、クラシックをすごく聴く人なら楽典を読んでも理解できる。つまり、自分が聴いてこなかった音楽については理論を読んでもわからない、結局音楽の一番の勉強は聴く事ですよね。理論は聴いて知った音楽を自分の中で整理する ためのもので、結局聴いた数がものを言うというか、理論から音楽を学ぶのはやはり難しいです。理論ということは結局統計ですからね。

椎名 でもやっぱりコンプレックスではあったんです。会社にいたとき、音楽ソフトを使って作曲をしていたら「この構成では演奏できません」というエラーメッセージで画面が真っ赤になるんですよ。周りはできる方が多かったので、それを見て凹んでいました。恥ずかしい話、バイオリンとビオラの違いもわかっていなかったので、(アルト音記号ではなく)ト音記号で楽譜を書いてしまい、レコーディングに来たビオラの人が帰ってしまわれたこともありました。

梶浦 私もやりました。

椎名 やりますよね(笑)。

梶浦 私のお呼びしたビオラ演奏者は親切な方だったので弾いてくれました(笑)。ソロだったから弾いてくれたのかもしれませんが。

椎名 僕はそのとき、ビオラという楽器を覚えたんです。それ以前は、バイオリン群という感覚でしたから。コントラバスとチェロの違いもわかっていませんでした。

でも挫けずに努力し続けた結果、今に至るわけですね。

椎名 いや、挫けていましたよ。心が折れた時は、気晴らしにファーストフード店でずっとポテトを食べていました(笑)。ディップだったり振って味がつくやつだったり、プレーンや納豆やら20種類くらいあったのを1日で制覇したと思います。

それはすごい量ですね。

椎名 全部買いって好きなんですよ。コンビニ等にある「ホットスナック」を買い占めるとか。仕事に向かう途中によく通るお店が手ごわくて、そこは置いてある量が多いんです(笑)。でも、ストレスが溜まっていると、「やるか」という気持ちになってしまいます。あとは例えば、特定の種類のアイスクリームを買い占めるとか。

それは食べることでストレスを発散しているんですか? それとも買う行為自体がストレス発散?

椎名 どっちかわからないですね。昔、会社の忘年会でチキンナゲットを200個買ったことがあって。それは皆で食べるために買ったんですが、そのときに「デトックス」を感じました。「強者」になった気持ちを味わえるんですよ。レジが99個までしか打てないこともそのとき初めて知りました(笑)。(『ドラゴンクエスト』に登場する、パーティメンバーを全滅させる死の呪文である)ザラキのようなものですね。

梶浦さんは制作中のストレス発散方法はありますか?

梶浦 作業中に何か気分転換する、というのは私はできないんですよ。だって、他のことをするくらいなら仕事した方が進むじゃないですか?

椎名 (笑)。

梶浦 「それなら仕事しろよ、私」と思うので。例えば、1日出かけるというのも無理ですね。やるべき仕事があるのに気が紛れることはありません。だから、気分転換は別に必要ないとは思っているんですが、発散という意味では細かく何かしているかもしれないですね。

例えば、スケジュールが押し迫って1日に何曲も作らなければいけないときは、次の曲を作る前に前の曲をすぐ忘れる必要があります。そういうときはお風呂に入ります。「忘れろー」って言いながらドボーンって入って、「よし、忘れたー!」みたいな(笑)。あるいは、「発散」という意味でしたら、一番はバンドレコーディングですね。もう楽しくて楽しくて。バンドのレコーディングをするのは、曲をほぼ書き終わったタイミングなので、だんだん音楽が嫌になりかけているときなんですよ。「音楽作るなんてもうこりごり!」って。徹夜でバンド譜面を4、5曲書き上げて、バンドメンバーに集まってもらって、「はい、お願いします!」って渡すんですが、その後に演奏を「はぁ……、かっこいい」って聴いているときは幸せオーラがすごく出ていると思います。「生きててよかった!」って。

同じレコーディングでも弦の場合、こちらの書いた通りに弾いてもらうので、自分がジャッジする必要があるんですね。でも、バンドの場合は出てきた音が大事なので、弾いてもらわないとわからない部分が多いんです。だから、なんとなくデモを作ってはいきますが、メンバーと相談しながら作るしかありません。「もう少しかっこよくしたいんだけど」って相談すると、「このカッティングは?」「こういう攻め方は?」「じゃあリズムはこうで。スネアはどうする?」という感じで次々と出してくれるので、それを受け止め、「ヒュー! ヒュー! かっこいい!」って言いながら録るんですよ(笑)。だから、帰る頃は幸せ絶頂で、「あと100年くらいは音楽やりたい!」という気持ちに変貌しています。やっぱり、頭の中で鳴っていた楽器はあくまで妄想であって、生楽器のレコーディングというのはそれが現実になる瞬間なんですよ。弦やブラスのレコーディングでも、「私、結構いい曲書いたかも」と思ったり、心に届くものを生み出したような達成感があったりはしますが、バンドのときは少し違って、ただただ楽しくて死にそうになります(笑)。

制作作業が発散に直結しているのはいいですね。

椎名 あとはお弁当がいいときとか。

梶浦 それはそう!(笑)。やっぱり「食べる」というのは喜びですよね。レコーディングで自分が弾くことはありませんが、楽器の人に入れ替わり立ち替わり弾いていただくので緊張感があります。やっぱり疲れるんですよ。だから、1日が終わると非常に消耗しているんですが、そこにお弁当があると幸せを感じますね。食べるときは皆と話もできるし。

Composers Summit Concert 2018

日時:2018年12月28日(金) 開場 16:30 開演 17:30
会場:東京国際フォーラム ホールA

<一部 演奏予定作品発表>
◆梶浦由記
Fate/Zero、他
◆スペシャルゲスト 千住明
機動戦士Vガンダム、鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST、他
※上記以外の作品も演奏を予定しております。
※椎名豪の演奏予定曲も後日、一部発表を予定しております。

<出演>
梶浦由記(Pf.)椎名豪(Key.) スペシャルゲスト:千住明

Vocals:今井麻美、KAORI、笠原由里、Joelle、YURIKO KAIDA

Musicians:
東京ニューシティ管弦楽団
今野均ストリングス
是永巧一(Gt.)
馬場一人(Gt.)
高橋“Jr.”知治(Ba.)
長谷川淳(Ba.)
五十嵐宏治(Pf.)
ピアニート公爵(森下唯)(Pf.)
佐藤強一(Dr.)
阿部薫(Dr.)
大平佳男(Mp.)

MC:冨田明宏
※順不同

オフィシャルサイト

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