黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 22

Interview

『FF』もう一人のキーマン田中弘道氏(下)スクエニ合併から退社。そしてガンホーへ。

『FF』もう一人のキーマン田中弘道氏(下)スクエニ合併から退社。そしてガンホーへ。

僕はまず操作系からゲームをデザインするんです

はあ~。

田中 で、そういうやり方は一切止めたんですが、ユーザーインターフェイス(UI)の部分だけは関わり続けたいと思ったんですね。だから、『ゼノギアス』、『クロノ・クロス』(注40)、『FFXI』のUIはシステム設計からメニュー周りのグラフィックまで全部自分でドットを打って作りました。

注40:『クロノ・トリガー』の続編にあたるRPG。1999年にプレイステーション向けに発売された。

それはやはり、ユーザーが最初に触れる部分、ある種一番アテンションの上がるところだから自分でやりたいということだったんですか?

田中 PCゲームの頃からそうなんですけど、僕はまず操作系からゲームをデザインするんです。さらに言うと、僕はコントローラーがゲーム性を決めると思っていて、新しいコンシューマー機が出たら、まずコントローラーの形状を見ます。その上で、どうゲームを操作させるか、こういうゲーム性が乗せられるんじゃないかっていうことを考えるんです。なので、操作系をどう表示するかっていう、いわゆるグラフィック・ユーザーインターフェイス(GUI)の部分は常に握っていたいっていうのがあったんですね。今はもうスマホでの画一的なタッチ操作ですから、ちょっとそういうのはないですけど。

僕の時代は終わったんだなと思いましたね(笑)

デバイスがスマホに変わって、作り方もかつての手法とは変わってきていると思うんですけど、そのあたりで悩まれたことはないですか。

田中 一番作り方が変わったのは実はROMからCD-ROMになったときです。それまではいくら大容量といってもROMでは限界があったんで、そこにどれだけのデータを詰め込むかっていう、その容量の限界との戦いでずっと作っていたんですけど、CD-ROMは枚数さえ増やせば青天井じゃないですか。このとき僕の時代は終わったんだなと思いましたね(笑)。

そういう切り替わりでもあったわけですか。

田中 プログラムもオブジェクト指向になって、1ビット単位でキチキチっとアセンブラで詰める必要がなくなったんです。だから、『ゼノギアス』以降はプロデューサーに徹して、ゲーム性自体にはなるべくタッチしないようになったんです。先ほども言ったように、ユーザーが目にするメニュー画面とかバトルのインターフェースとかは自分でやっていましたけど、どういうゲーム性かとかバランスというのはディレクターの高橋(哲哉)君(注41)たちに任せるようになりました。今はUIの部分も完全に手を放しています。

注41:『ゼノギアス』のディレクター。現在はモノリスソフト所属で『ゼノサーガシリーズ』や『ゼノブレイド』、『ゼノブレイド2』などを手がけた。

ガンホーに入社した理由

スクエニをお辞めになられたあとですが、ガンホーさんからオファーみたいなものがあったんですか?

田中 それはないです。エンターブレイン(現Gzブレイン)さんが毎年正月に懇親会をやっていたじゃないですか。あの会場で今はガンホーにいる元スクウェアの人見一枝(注42)に会ったんです。実は、僕が辞める1年前に成田賢(注43)が退社していたんですけど、その懇親会で人見と会ったときに「ナリケン(成田賢氏)何やってんの?ウチ(ガンホー)を手伝ってほしいんだけどさ」みたいな話になったんですよ。そのときに「ああ、僕も辞めるから一緒に行くわ」って(笑)。それで、ナリケンの1カ月ぐらいあとに僕も入ったんです。

注42:スクウェアの元広報。スクウェア退社後カプコン、コナミなどを経てガンホー・オンライン・エンターテイメントに入社した。

注43:『FF』シリーズのプログラムを手がけた元スクウェア・エニックスのプログラマー。現在はガンホー・オンライン・エンターテイメント執行役員。

そういうことだったんですか。

田中 ガンホーとしては(成田氏は)プログラマーとして欲しかったみたいですけどね。ただ、ナリケンはもう絶対にプログラムは組まないっていう強い意志があったので、僕と彼とで森下の相談役みたいなことをやることになったんです。それで1年間ぐらい、いろんなタイトルを見ていたんですけど、2度目の入院をしたあとぐらいから僕はまた自分でゲームを作るようになったんで、以降はずっとナリケンが森下のお守り役をしています(笑)。

じゃあ、今は現場でやられているんですね。

2012年10月12日開催_黒川塾_3_「ガンホー(突撃)ナイト」より_森下氏と。

田中 僕はそうですね。ナリケンは森下に引きずられて毎晩飲み歩いていますよ、ハハハハ。

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