黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 22

Interview

『FF』もう一人のキーマン 田中弘道氏(上)ハンダゴテを持った少年が坂口氏と出会うまで

『FF』もう一人のキーマン 田中弘道氏(上)ハンダゴテを持った少年が坂口氏と出会うまで

大学に行くよりもゲームを作る方が面白くなっちゃって・・・

大学を卒業せずに途中でスクウェアに。

田中 ええ。僕も坂口氏もそうですからね。大学に行くよりもゲームを作るほうが面白くなっちゃって。これは何度かいろんなところで話していますけど、大学1年のときに坂口氏と知り合って、春休みにバイトしようぜってことになって。それで、「フロムエー」のバイト募集を見ていたら、スクウェア(当時は電友社)がプログラマーを募集していたので、じゃあここに行こうということになったんですね。坂口氏の記事にも書いてありますけど、当時LISP(リスプ)とかPASCAL(パスカル)とかFORTRAN(フォートラン)(注9)とかのプログラミング言語ソフトだけ持っていたんです。でも、(プログラムを)組めるわけじゃないんですよ、持っているだけっていう、ハッハッハ。

注9:これらはコンピューター黎明期に使用されていたプログラミング言語。

組めるわけじゃなかったんですか?

田中 そうなんです。でも、1週間ぐらいだったらバレやしないぜって言って。

ハハハハ。ホントですか、ええ~?

田中 最初はどうせお堅いところでしょと思っていましたね。ところが、宮本(雅史)オーナー(注10)がとにかくゲームを作りたいってことで人を集めていて。で、オーナーの企画で某競技系スペシャルもののテレビ番組のゲームを作れというんですよ。それで作り始めたんですけど、当然テレビ局側の許可なんか取っていないんでコレは大丈夫なんだろうかと。

注10:スクウェア(現スクウェア・エニックス)の創業者。初代社長として勃興期のスクウェアを牽引した。現在は株式会社スマートコミュニティの代表取締役会長。

『ザ・デストラップ』完成秘話

すごい作り方をしますね。

田中 だいたい作り始めて1カ月ぐらいでポシャるのが見えたので、坂口氏が「このままじゃオレら食いっぱぐれるよな」と。今だったら完全に労基違反ですけど、じつは時給で募集しておいて途中から出来高制になったんですよ。だから、僕らはこのまま終わるとタダ働きになっちゃうんです(笑)。で、当時アップルIIでアドベンチャーゲームが流行っていたので、「これ作ろうぜ」となって出来たのが『ザ・デストラップ』(注11)です。

注11:1984年にリリースされたスクウェアの処女作。コマンド入力タイプのアドベンチャーゲームで翌年に続編となる『ウィル デス・トラップII』も発売された。

すごい会社ですね。当時、アルバイトは何人ぐらいいたんですか?

田中 20人いなかったですかね。そのオーナーの企画がポシャった頃にはもう坂口と僕とあとグラフィックが3、4人、プログラマーが2人とかのチームが2チームぐらいですから15人ぐらいになっていました。

それでもけっこういたんですね。それにしても、おふたりともプログラムを組んだことがなかったのに、よく作れましたね。

田中 僕らはプログラムは組んでいないですよ、『ザ・デストラップ』の頃から完全にプランニングの方に……あ、でも僕はBASICを使ってディスクのI/Oプログラムの一部を作りましたね。フロッピーディスク上のトラックからセクター単位でファイルを読み出すような。当時、N88-BASIC(注12)はけっこうやっていたんです。坂口氏も入力したアルファベットをカナ1文字に変換するっていう、FEP(フェップ:日本語入力システムの通称)に相当するところのプログラムをアセンブラで256バイトぐらい使って作っていました。でも、描画とかその辺はちゃんとしたプログラマーが別にいたんで、僕も彼も作っていないですよ。

注12:NECのPC-8801、PC-9801シリーズで作動するBASICのこと。

そこで何かが出来上がるっていうのを体験しちゃったがゆえに、もう学生はちょっとやっていられないみたいな感じになったんですかね。

田中 そうですね。ゲームを作ることが面白かったですし、僕が最初に思っていた壁掛けテレビとは違う方向性で、コンピューターっていうものに何か新しい時代を感じていましたしね。

撮影 / 北岡一浩 取材協力 / 仁志睦


続きは第2回インタビューへ
11月19日(月)公開予定

『FF』もう一人のキーマン田中弘道氏(中)ナンバリング同時展開で『ドラクエ』を抜きたい。

『FF』もう一人のキーマン田中弘道氏(中)ナンバリング同時展開で『ドラクエ』を抜きたい。

2018.11.19

著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

< 1 2 3 4
vol.21
vol.22
vol.23