Interview

木村カエラのミニアルバム『¿WHO?』。個性があれば、何にだってなれる、何色にも染まれる

木村カエラのミニアルバム『¿WHO?』。個性があれば、何にだってなれる、何色にも染まれる

木村カエラがキャリア初となる5曲入りのミニアルバム『¿WHO?』をリリースした。
2000年代を代表するポップアイコンとして、バンドシーンやファッション/アートシーンに刺激を与える一方で、『NHK紅白歌合戦』出場も果たし、数多くのCMにも出演。誰もが知る存在である彼女が、メジャーデビュー15周年のアニバーサリーイヤーとなる2019年を直前にした作品にどうして“誰?”という意味のタイトルを付けたのか。その真意を探るとともに、15周年に向けた意気込みも聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ

自分という個性が明確であれば、何にだってなれる

いきなりですけど、ミニアルバムのタイトルの意味から聞いてもいいですか?

5曲入っているんですけど、あとからレコーディングした「Tomorrow」以外の4曲はそれぞれタイアップが決まっていたので、テーマに沿って作ったり、リクエストがあって作った曲が集まっているから、その色によって様々な個性が出ていて。声のトーンも違うし、書いている内容も違う。曲の振り幅も広いし、すごく前に作った曲もある。だから、まとめて聴いたときに自分で「これ、誰?」って思って(笑)。ちょうどリード曲「COLOR」を書いているときに、“個性”というものを考えていて。“ひとり”の人がいろんな人になれる、自分という個性が明確であれば、何にだってなれるんだっていう面白さもあるなと思って、タイトルを『¿WHO?』にしました。

そういう意味だったんですね。なんでいまさら“誰?”っていうタイトルにするのかと思っていました。

それぞれがあまりにも違いすぎて。子供向けに作った曲もあれば、今の私から女の子たちに向けてメッセージを込めた曲もあるから。

「ちいさな英雄」──パッと黄色に輝く世界

では、どんなリクエストやテーマに沿って作ったのか、一曲ずつ解説していただけますか? リード曲は最後に回すことにして、まず、2曲目の「ちいさな英雄」は『メアリと魔法の花』のスタジオポノック製作による短編映画『ちいさな英雄ーカニとタマゴと透明人間ー』のエンディングテーマになってます。

親子で映画館に来て、小さな子に短編集を観てもらいたいっていうスタジオポノックさんの願いがあって。「子供がみんなで口ずさめるような曲がいい」っていうリクエストから、しのっぴ(渡邊 忍)と私なりに作っていった曲ですね。

子供向けではあるかもしれないですが、親目線も入ってますよね。

そうですね。AメロとBメロは終わりのない戦いと向き合っている親の視点。愛情はあるけど、「やっぱり大変じゃない?」っていう目線に立ちつつ、サビでは子供が無邪気に楽しく歌えるといいなと思って。

リード曲のタイトル「COLOR」に合わせて、それぞれの楽曲が持つ色も聞いていいですか。

この曲は、映画のプロデューサーに「カエラさんはいつも太陽みたいな声をしていて。聴いただけですぐにカエラさんの歌声だってわかる」って言っていただいて。力を与えられるものを作れたらいいなと思っていたので、意味がどうこうというよりも、身体が思い描く色として、太陽の色が出てくるといいと思っていて。ちょうど絵本『ねむとココロ』を出した直後でもあったので、パッと黄色に輝く世界みたいなものもイメージしてますね。

「Run to the Rainbow」──抜け切らない空の色

ありがとうございます。続く、「Run to the Rainbow」は「JAL ホノルルマラソン2018」のテーマソングです。

『sakusaku』時代にホノルルマラソンのレポーターとして1週間ハワイに行ったことがあって。そのときに観ていたレースやハワイの海や山、風や、ゴールの虹の形をしたアーチを思い出しながら書きました。マラソンをしているときは邪魔されたくないし、ペースを乱されたくないだろうから、あまり暑苦しく歌うのはよそうと思って。それよりも、マラソンをしてるときに無になっていく感覚とか、過去や現在のことが浮かんでは消えて自分の中が整理されてクリアになっていく感じを大事にしてる。自分でも実際に走ってみて、心地よく走れるようなテンポ感を考えました。

実際に走ってみたんですね。

うん。例えば、走るときに“風に乗る”なのか“風を切る”なのか、「どっちなんだ?」って考え始めたらわかんなくなって。自分でも走ってみないとわからないと思ったから、一回走りに行って。そしたら、“風を切る”だなってわかって、そういう言葉を入れたりとか。あとは、ハワイの壮大な景色の中で自分をバンと開いていく気持ちよさと、ホノルルマラソンのゴールに虹のような形をしたアーチがあるから、そのゴールに辿り着くようにっていうイメージでも書いてました。

じゃあ、色で言うと“虹色”ですかね。

うーん。抜け切らない空の色かな。一番最後のアウトロで曇りから晴れに変わる。グレーから青に変わるっていう感じですね。

「HOLIDAYS」──1週間を虹で表現

4曲目の「HOLIDAYS」は、JRA「HOT HOLIDAYS!」キャンペーンのCMソングとして書き下ろした楽曲で、昨年5月に23枚目のシングルとしてリリースされた際のジャケットには虹がかかってました。

そうそう。1週間を虹で表現して、赤い怒る日、オレンジみたいな穏やかな日、青のように泣く日があって、最後の7日目で全部が虹になってキレイになるっていうイメージで書いた曲だったんですよね。だから、シングルのジャケで昔から大好きなロドニー・グリーンブラッドさんに虹を書いてもらいました。

「COLORFUL HOLDAYS」というフレーズもあります。

あ、ホントだ(笑)。私、虹が好きなんですよ。絵本にも出てきたし、なぜか太陽と虹と空がすごい好きで。つい出てきちゃいますね。この曲はもともと、“HOLIDAY”という言葉を入れて欲しいというリクエストがあったので、休みの日を楽しもうというテーマで作っていって。みんなで歌えればいいなって思いながら書いていたし、あとは、久しぶりに言葉遊びを楽しもうと思ってましたね。

光を与えたい「Tomorrow」──やっぱり赤かな

5曲目の「Tomorrow」は映画『Annieアニー』の主題歌のカバーですね。

私、本当にこの曲にいつも元気をもらっていて。歌うだけでスカッとするんです。よくお風呂で歌ったりするし、朝ごはんを食べてるときに流したりもしてる。今回のミニアルバムは、タイアップの曲が多いけど、人に元気になって欲しい、光を与えたいっていうメッセージがわかりやすく入ってる曲があるといいなと思って。みんなが知っていて、私が普段一番勇気づけられている曲ということで歌わせていただきました。この曲を聴いてちょっと口ずさむだけで、気分が変わるんじゃないかっていう希望が持てる歌ですね。

15thシングル「Ring a Ding Dong」のジャケットでも『Annieアニー』へのオマージュをしていましたが、もともと好きになるきっかけは何でした?

一番最初の映画をレーザーディスクで観ていたんですよ。それを小さい頃からずーっと繰り返し観ていて。去年初めて、日本バージョンのミュージカルを観に行ったんです。もう、冒頭から感動しちゃって。私の中では映画がすべてで、今ではDVDも持っていて、時間があると見てはいつも泣いちゃうんだけど、舞台は本当に涙腺が崩壊して(笑)。改めて、この曲の持つパワーのすごさを感じましたね。

今年の6月にCOTTON CLUBで開催された大人のライヴシリーズ〈THE BLUE SESSIONS〉でもカバーしてましたよね。

ライヴでやったときは英語が入ってなかったんですよ。でも、英語の歌詞を入れることによって、もっと広い人に聴いてもらえるっていうのもあるなって思って。ちょっと暗い気持ちでいる人が明るくなれたらいいなって思う。それで、みんなが歌ってくれたらもっといいなっていう気持ちがあって入れましたね。

最後の「明日は幸せ」の伸びやかさといったら、ないですね。本当に「届け!」っていう思いが伝わってきました。

ミュージカルでしょ?(笑)ああいうキメがある感じはちょっと照れるよね。でも、いつかやりたいってずっと思っていたので、このタイミングでできるのはすごくいいなって思います。色は、やっぱり赤かな。

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