Interview

sleepyhead 『NIGHTMARE SWAP』の完成で加速する脳内優先のアーティスト像

sleepyhead 『NIGHTMARE SWAP』の完成で加速する脳内優先のアーティスト像

アイス食べ終わるまでにお前ら全員殺せちゃうよ、みたいな(笑)

最もポップだという4曲目の「DON’T YOU LET ME GO feat. AISHA」は、AISHAさんが疾走感あふれるロックを歌い上げ、武瑠さんはラップに集中してますね。

レコーディングを見て、その夜眠れなかったです、凹みすぎて(笑)。生で聴いたことがないレベルの歌だったんですよ。だって、アイスを片手に持ちながら歌ってたんですよ。信じられます?

アイス!?

もう絶対の自信があるんですよ。アイスが溶けるような時間はやらない、テイク重ねないって。

すごいですね……。

格闘マンガに出てくる奴みたいじゃないですか!? アイス食べ終わるまでにお前ら全員殺せちゃうよ、みたいな(笑)。俺ホントびっくりして! で、マジでどこ切り取ってもうまいんですよ。しかもただ通るだけのドヤな歌い方じゃなくて、わざとしゃがれたりもするし低い息遣いもするし、英語ネイティブなうえに日本語の発音も良いし、何これ完璧じゃん! って同じシンガーとして凹みましたね。超分析したんですけど、「アッ」とか「カッ」っていうアタックを全然してないのに超グルーヴしてるんですよ。伸び縮みするバイオリンみたいな声質。生まれながら歌っていうものに触れてきてる本能的な才能を見ましたね。

R&Bのイメージが強いAISHAさんにロックを歌わせるのも新鮮でしたから、双方にとって“スワッピング”ならではの産物ですね、これは。

R&Bすぎない曲を当てようとは思ってたんです。自分が演者というよりプロデュースワークみたいな作り方でした。この人とこの人が歌うからアレンジャーはこの人に振るとか。その素材でどんな料理ができるかっていうのを最大限に生かした曲だったと思います。化学反応を作る楽しさってあるんですよね。どういう素材を面白いと思うかは時期によるんですけど、3曲目の「BACK TO FIRST DAY feat.SHIROSE(WHITE JAM)」のサビのメロディは今の気分的に超好きなんですよね。力抜いて歌える感じが。

「BACK TO FIRST DAY」では武瑠さんのボーカルスキルにも圧倒されました。

いわゆるJ-POP曲だと使わないキー感ですよね。SHIROSEくん自体、出せるキーが恐ろしく広いんですよ。俺も広めっちゃ広めなんですけど、SHIROSEくんはパッと聴いた感じ3オクターブ半くらい、普通の人の倍以上。そういう人が作る曲だからレンジが広いんです。

そして「Neverending Dream feat.SHO ASAKAWA(PLASTICZOOMS)」は、壮大なコーラスでラストにふさわしいロックアンセムですね。

これは詞も曲も全部SHOくんにお任せしてみました。もともと知り合いだったんですけど今年2月にライヴを観に行って、俺がやろうとしてる“ストリートゴシック”に近い感性の人だなと思い、自分の復活ライヴも観に来てもらって1曲書いてもらうことになりました。曲を聴いたら、一番最後の曲っぽいなと思って。収録曲の中で一番洋楽っぽいメロディの譜割りで、SHOくんのバックボーンが見える曲だなって。

小さくても独自の城を作って少しずつ大きくしていくほうが合ってるんだろうなって

この幅広いコラボラインナップを1枚にそろえられるのも、sleepyheadのアーティスト性なんじゃないでしょうか。

まあ、もはや情熱ですけどね(笑)。でもブランディングに関しては、復活してからのMV1本1本に手を抜かずにやってるからっていうのは絶対にあると思います。もっと楽な人とだけ対バンして曲売って、みたいなテキトーな活動をしてたらきっと受けてくれないメンバーだから。

通して聴くと、武瑠さんの歌も純粋にスキルアップしてるように思いました。

今回はSHIROSEくんとAISHAの歌のパワーがすごくて凹みましたけどね。でも、レベルアップさせるべきところとか、今の自分の武器とかは明確になった気がします。今の自分の力で一番良く聴こえるのは「1 2 3 for hype sex heaven」だろうな。

サウンドに関して全体でこだわったことは?

ジャンルが相当バラけて多彩になるのは分かっていたので、デザイン感とかなんとなく叙情的なところでつないで一つのモノにしようっていう思惑はありました。あと、1枚目よりもビート感を重視しようとも思ってたんで、それはできた感じがあります。音色で埋まってるものよりもビートがちゃんとループであって、展開があったとしてもノリ自体はそこまで変わらない、前作の「酩酊」みたいな曲がライヴでやってて一番楽しいから。メタルのような展開でノリ方とかグルーヴがどんどん切り替わっていくものは意外と好みじゃないんだなってライヴをやって分かってきたんですね。

今の自分に合うものやビジョンが明確に見えてきている最中、という感じですね。じゃあリスナーの希望とか、変に汲み取りすぎずにいけそうですか?

もうそんなに考えてないかもしれないです。どっちにしろ戻る場所もないし、貫くしかない。孤独で寂しい部分もありますけど、小さくても独自の城を作って少しずつ大きくしていくほうが合ってるんだろうなって。商業的には誰かと対バンしたりフェスに出たりして「MV良かったからちょっとライヴを観てみよう」ってなるのが王道のやり方なんでしょうけど、いきなりワンマンに来てもらうくらい色濃いものをやっていかなきゃいけない立ち位置なんだろうな、と思ってます。

独自の方法論で勝負していこう、と。

まあ、分かってたことだし。規模が1回縮小して、そこから裏返すのにどれだけ時間がかかるかっていう勝負だと。最初からそういう覚悟で始めてるので。だから規模云々じゃないところで貫き続けることが大事かなって思いますし、貫くもの自体は素材としてどんどん上がってきてる体感があります。例えば規模が1回小さくなっても洗練されたモノが評価される世の中だったら、三浦大知さんなんてとっくに売れてたはずで、俺はすげー時間がかかったように感じてて。なんでこんなすごいことやってるのにここまで時間がかかるんだろって、たぶんみんな思ってたと思うけど(笑)。俺はまだまだですけどああいうレベルに到達して、裏返らないわけないっていう状態で待機するっていうのが、自分の目指したいところですね。

1万人規模のライヴをやるよりも100人規模の継続的なコンセプトライヴをやるほうが成功になるかもしれない

状況を裏返していくための具体的な“作戦”はあるんですか?

音楽だけやってたら絶対勝ち目はないと思うから、俺は脳を活かそうと思って。音楽と、ファッションと、映像と、いろんな部分に刺せるアーティスト像。それが7月29日のツアーファイナルでやったステージ上で髪を切る演出だったり、それをレーザーと合わせたり。そういうアイデアがよく思いつくタイプだから、それをもっともっと広げていく。つまり音楽を音楽として捉えないくらい立体的に表現する。っていう意味で、キャッチとして“3D音楽”という言葉がしっくりくるのかなって。

ライヴを観た人なら、その意図は分かると思います。

あ、ひとつ最近良いことだなと思ったのは、世間的にオリコンチャートを気にしなくなったこと。自分には追い風ですね。CD売上=アーティストの評価みたいに、強制的にもの差しで計られてたところが少し壊れてきた。例えば若い子からしたらバラエティタレントよりYouTuberのほうが人気があって、音楽以外の世界でも今までのもの差しが急速に壊れていってますよね。これはもしかしたら1万人規模のライヴをやるよりも100人規模の継続的なコンセプトライヴをやるほうが成功になるかもしれないなって。

100人規模のコンセプトライヴって?

いつかやってみたいんですけど、例えば1年間通してライヴをやって、登録した100人の家具を1個1個そろえていく企画。1カ月目は机作ります、2カ月目はイス作ります、3カ月目は照明作ります、みたいなことがライヴと連動して、その100人のライフスタイルが完成していくとか。あとは俺が1週間ステージから降りないライヴとか。ニトリとコラボしてステージに生活環境作って……昔の『電波少年』みたいな絵ですね(笑)。そんなことばっかり最近考えてるんですよ(笑)。

面白い。本当にアイデア脳なんですねえ。

これがたぶん、俺の伸ばすべき最大のストロングポイント。逃げ的な意味じゃなくてライヴ動員と売上枚数は優先順位4番目ぐらいに考えていかなくちゃいけない。優先順位1位は「自分がドキドキすること」。今回のMVとこの前の髪切ったライヴはまさにそれだったんですよね。純粋なミュージシャンじゃなくても、それを時間をかけてやっていくべきだなと思ってるんです。そういうところでスポットが当たってくれれば、より現代のアーティストになっていけるのかなと。長い闘いになると思う。でもそっちのほうが飽きないからいっか、って。

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ライブ情報

“sleepyhead ONEMAN LIVE 2018「共存半月」”

12月29日(土) SHIBUYA STREAM HALL

武瑠

手法や領域に縛られることのない、体現型クリエイター。ファッションブランドmillion dollar orchestra主宰。音楽、映像、小説、デザイン、ファッションをミックスし、3D音楽表現を展開。2010年1月、SuGのボーカルとしてメジャーデビューを果たし数々のヒットチューンを生み出す。2017年9月2日、日本武道館公演をラストライヴとし、バンドを解散。2018年1月31日22時27分、満月。皆既月食の夜に、ソロプロジェクト・sleepyheadをスタートさせた。

オフィシャルサイト
http://sleepyhead.tokyo

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