新しい仕事っていうのは10年しないと成り立たないと父親は言っていた
それぐらいになりますよね。最後にこれからゲームを作ろうという人たち、もしくは作りたいけど、今は違う道に進んでしまったような人たちに対してメッセージをいただけますか。
楢村 あんまり、「日本は」とかいう風に縛って言いたくはないんですけど、でもやっぱりクリエイティブな面がわりと軽く見られているようなところがありますよね。小島監督もよくインタビューなどで、ゼロから作り出す人をもっと大切にしなきゃって言っていますし。元プロボクサーの亀田興毅さんも世界チャンピオンになったのにギャラが安かったって言っていますけど、あれとけっこう通じるものがあって、ここまでいったのに生活の資金が尽きるなんてことがあると、目指そうっていう人がいなくなると思うんですよね。
だから僕が金持ちになればいいってわけではないです。ただ、これだけ年数をかけて作ったのに、それに見合う評価が……出来が悪ければ評価が低くなるのは当たり前ですよ。できたものがすべての世界ですから、そこには自分も覚悟を持ってやっています。でも、その覚悟があってクリエイティブな仕事をしている、まだまだ日の当たっていない人はインディーゲーム以外にも日本にはいっぱいいて、みんな苦労していると思うんです。
そうでしょうね。
楢村 僕が父親からよく聞いていたことですが、新しい仕事っていうのは10年しないと成り立たないというか、実を結ばないと。それはもっともなんですけど、その10年の間に挫折してしまう人とか、すごく多いと思うんですよね。本当は世界に誇れるようなことをやっているのに、スポットが当たらないままっていう。で、日本でそういうのが評価されるのは世界で評価されたあとなんですよね。そのころになって「ワアーッ」ってなるんですけど、本当はその前にもっと助けてもらいたいですよね。
本当にそうですよね。
楢村 だからといって自分がどうしたらいいとかっていうのを提示できるわけじゃないです。ただ、自分たちが最初に出したころに比べると、個人の力を持った人間が出やすくはなっていると思います。今なら10年ではなく2年、3年、5年って人でも、なんとか歯を食いしばって継続すれば、まっとうに評価されるんじゃないかと信じて僕はやっているんですね。そう信じてやりつつ、ちゃんと評価に合ったバックがあるような形を作ってみせたいなと思っているんです。
だから、特に挫折した人たち……もちろん、実力の世界なので挫折は当たり前だと思うんですけど、それでもあきらめたくないのであれば、なんらかの形で続けることが大事だと思いますね。家族に認められなくても、何かの仕事をしながら夜中に起きてこっそりやるとかね。僕自身がそれの繰り返しでしたから。保育園のとき漫画家になりたいとか言うと、親に「手塚治虫はな~」とかって2時間ぐらい説教されて(笑)。
大変だったっていう話を(笑)。
楢村 中学のときにエレキギターが欲しいって言ったときも、ああいうのは家を出てからやるもので、それこそ指から血が出るほど訓練しないとダメなんだとかって、また2時間説教ですよ。夢を軽く語ると、そうやって止められていました。でも、隠れて友達に小室哲哉モデルのEOSのキーボードを借りてきて、「受験勉強するわ」って言って親が寝たときに曲作りをやったりとか。もちろん怒られましたけど、でも僕は止められても止まらなかったんです。それはすごく大きかったと思いますね。

2014年。PAX EASTにて海外のバッカー・配信者と記念撮影。
今でも収入的には同世代の一般サラリーマンのレベルにまで達してないですし、さらに上下する不安定な世界なんで、家族にはあんまり良く思われていないと思うんです。でもまだ……うん、家族には申し訳ないですけど形になるところまで達したいですね。達しなかったらダメ人間、でも成功したらすごいっていう世界ですからね。だから、なんとしてでも成功しないとダメなんですけど、その覚悟があるのであれば、絶対に突っ切ったほうがいいと思います。エラそうですけど、ハハハハ。
いやいや、今日はいい話を聞かせていただきました。ありがとうございました。
楢村 はい、ありがとうございました。
撮影 / 北岡一浩 取材協力 / 仁志睦

著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】
くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。