黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 21

Interview

インディーゲームの匠 楢村匠(ならむらたくみ)氏(下)オンラインで開発する時代

インディーゲームの匠 楢村匠(ならむらたくみ)氏(下)オンラインで開発する時代

インディーはニーズで盛り上がったというよりは業界から盛り上がったような印象がありますよね

ちょっとイヤな質問かもしれませんけど、インディーのフラグシップ的に見られていますよね。それについて、ご自身はどう思われますか?

楢村 まったく自覚はないです。2013年ぐらいですよね。東京ゲームショウにインディーコーナーができて、インディーっていう言葉が聞かれるようになったのは。でも、ニーズで盛り上がったというよりは業界から盛り上がったような印象がありますよね。

今のeスポーツに近いですよね。

楢村 そうです、そうです。わりとインディーとはこうだとか、こうあるべきっていうのは外から言われ始めたんですよね。でも、僕らは今までお話ししたように、やりたいことをやってきて、こうなったっていうだけなんです。なので、インディーなのに、なんでそんな古いタイプのゲームを作っているんだとか言われても……。

チャレンジブルじゃないとか、突出したアイディアがないとかね。

楢村 そうそう、そんなの大きなお世話だっていう(笑)。ただ、作りたいもの作っているだけですから。

それがインディーのはずですよね。

楢村 そうです。だから、なんで外からこうあるべきってスタイルを決められなきゃいけないんだっていうのは常々思っています。

僕はGDCで聞いた楢村さんのお話が、すごい印象的だったんですね(注37)。あの「メシウマ」っていう言葉に代表される、ユーザーを突き放すサディスティックな感覚といいますか。でも、それはご自身が経験してきたものをユーザーにも体験させたいっていうことなんですよね。

注37:楢村氏が2013年のGDC2013年で行った講演のことで、その際プレイヤーが自分のゲームで死んでいくさまが「メシウマ」だと語った。

楢村 そうです、そうです。あのGDCの講演がニュースになったとき「プレイヤー殺し」みたいに言われましたけど、いい人なんですよ、僕は(大笑)。

2013年のGDC講演。

ハハハハハ、言われましたよね。

楢村 自分で講演の中に折り込んだんですけど、それが一人歩きしているような気がしないでもないです。とにかく、今はユーザーと近いところでやり取りしながら作る、遊んでもらうっていうのが楽しいんですよね。

なるほど。いいですよね。

楢村 僕が子供のときに読んでいたパソコン雑誌ってソフトハウスの制作現場とかが載っていたんです。『ハイドライド』の内藤時浩さん(注38)なんかは文章も書ける人だったので、制作過程とか自分で書かれたり、写真も撮って載せたりしていたんです。あれが子供ながらに、すごく楽しそうに見えたんですね。すごい少人数で楽しそうにゲームを作っているっていう。だから、僕は会社を大きくするとか、管理をキッチリするとかっていうことに全然良さを感じないんです。ゲームっていうのは娯楽作品で、作っている人が楽しいって感じていないと絶対にダメだと思っているので。

注38:『ハイドライド』シリーズ、『アンデッドライン』などを手がけたことで知られるゲームクリエイター。現在は有限会社エムツー所属。

ええ、ええ。

楢村 だから、システマチックになるよりも、作っている人間の我がバリバリに出たり、コイツらが作るのはこうなんだっていう色が強いほうが絶対にいいと思います。仮にNIGOROが大きくなって、従業員が増えて事務所を構えて、コンスタントに年1本出すぐらいになったら、それはもうゲーム開発会社ですよね。そうなると、そこまでのこだわりっていうか、作り込みはできなくなる。だったら資本も歴史もある開発会社に任せたほうがいいじゃないですか。つまり、それはインディーである特徴を自分たちで全部そぎ落とすってことなんですよね。

そうですよね。

楢村 たとえば『Owlboy』(注39)であるとか、数年かけて作られたインディーゲームが評価されていますが、絶対大変だったと思うんですよ。あと『Indie Games in China』(注40)っていう中国のインディーを題材にしたムービー、『Branching Paths(ブランチング・パス)』(注41)みたいなのですね。その特集をIGNジャパンで見たんですけど、日本人以上に苦労しているんです。

友達であるRocketPunch Games(注42)のルイッキー(穆飛氏)も出ているんです。彼らもキックスターターで資本を得ていて、僕らのキックスターターに応援コメントを出してくれたりしたんです。その彼がすごい苦労しているのを見たりすると応援したいなと思いますよね。完成まで時間がかかっているものは、それだけこだわりをかけて作られているんです。それが評価されているんですけど、やっぱり長い時間をかけると、それだけ苦しい思いをするっていう。

注39:開発に8年以上かったというアクションアドベンチャー。フクロウ族のオータスとなって大空を飛び回りながら、世界の謎を解き明かしていく。

注40:中国のインディーゲームを代表する5人のクリエイターに密着取材したドキュメンタリーで中国のタイトルは『独行』。現在、Steamにて配信中(日本語版はなし)。

注41:日本のインディークリエイターたちに密着したドキュメンタリー。のちに任天堂に入社したもっぴん氏などが出演している。Steam、PLAYISMにて配信中。

注42:穆飛(Louiky Mu)氏が主宰する中国のインディーディベロッパー。現在、2Dアクションゲーム『Hardcore Mecha』(旧題『Code:HARDCORE』)を開発中。

あの人に悪いから自分がやりたいことを止めるとかって、これが一番ダメだと思うんです

経済的にも精神的にも疲弊しますよね。

楢村 ええ。どこが落としどころか自分でも分からなくなることもありますけど、やっぱり長い時間をかけて、こだわって作るっていうところは評価してもらっていると思うんですよね。グラフィック面とか音響面とかそういうところでは、お金をかけている大手のゲームに絶対かなうわけがないですし、遊ぶ人もそれは気づいている。でも、インディーだからとか、長年頑張って作っているからとか、そういったところに魅力を感じてくれている人もいるんじゃないかと。なんとなく見ていると、そう思うんですよね。値段も少し低めだったりしますし。だからといって、時間をかけて作りたいってわけじゃないです。ただ、規模を大きくして、ラインをいっぱい作ってっていうのは違うような気がしています。

インディーって呼ばれることに抵抗はないけど、だからインディーでやり続けているわけでもないって感じですよね。

楢村 そうですね。今回の東京ゲームショウではコナミのブースの方にいますし。僕はあそこにいること自体、そんなに違和感はないです。もちろん、インディーコーナーの方に出てもいいとも思っていますけど、今回は海外にも広く宣伝したかったんで、じゃあどっちがいいかっていったら、やっぱり効果的に海外に知られるコナミの方だろうと。だから、インディーに出なきゃいけないって強く思っているわけではないです。ビットサミットなんかも大きなイベントになってきましたけど、海外の方に発信するっていうところが弱くなってきているんですよね。じゃあ、僕らが枠をガーッて取るよりも、新しい人がそこに入ったほうが全然いいんじゃないかと思っています。

ただ、インディー的なスタイルっていうんですかね。会社だからこうしなきゃいけないっていうような自分たちを縛るようなことはせずに、流通とかいろいろなところに気を使わずに、こうしたいからこうやるっていうスタイルは続けていきたいと思います。いわゆる、いいとこ取りですかね。いろんなところに知り合いがいて、あの人に悪いから自分がやりたいことを止めるとかって、これが一番ダメだと思うんです。

そうですよね。ちなみに、なんで今回コナミさんだったんですか?

楢村 パッケージを出すことになったんで。PLAYISM(注43)はそういうパッケージの流通は持っていないんです。だから、ファルコムさんの『閃の軌跡』と同じようにパッケージはコナミさんの流通に頼るっていう形に。

注43:世界中のインディーゲームのダウンロード販売などを行っているプラットフォーム。

それはウェルカムでやっていただける感じなんですか。

楢村 そうです。

それは良かったですね。

楢村 でも、僕たちが発足した経緯を考えると、コナミで出すのはいいのかと思っちゃいますね(笑)。

勝手に『グラディウス』の続編ですもんね(笑)。作り始めて何年になりましたか?

楢村 『GR3』のころからだと、もう15、6年にはなっていると思いますね。

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