Interview

HY 20周年に向けて「Road to 20thプロジェクト」をスタート。30曲をセルフカバーしたベストとトリビュート作品について訊く

HY 20周年に向けて「Road to 20thプロジェクト」をスタート。30曲をセルフカバーしたベストとトリビュート作品について訊く

結成18年を迎えたHYが、20周年に向けて「Road to 20thプロジェクト」をスタート。その第一弾として、MONGOL800や青山テルマ、清水翔太などがHYの名曲を手掛ける初のトリビュート・アルバム『CHANPURU STORY ~HY tribute~』を8月8日にリリースした。さらに、8月22日には、ベストアルバム『STORY~HY BEST~』をリリース。こちらは、ファンクラブで募集した「収録してほしい曲」のランキングを元に構成された2枚組30曲をなんと全曲セルフカバー。歌い継がれていく名曲たちを多く生み出してきたHYが歩んできた18年、そして20周年に向けた想いを聞いた。

取材・文 / 大庭利恵 撮影 / 石ヶ森三英

今のHYを伝える感じにしていくべきじゃないかという話になったんですけど、変えるよりも、音源に忠実にしながら変化をつけていく方が大変でしたね(宮里)

セルフカバーのベストアルバムをリリースしたいという思いは、以前からあったんですか?

新里英之(Vo, G) 20周年は新たなスタートとしてオリジナルアルバムをリリースしたいと思ってるんで、もしベストをリリースするならこのタイミングかなと思って。ただ、自分たちがセルフカバーのベストを出せるなんて思ってなかったですよ。

名嘉俊(Dr) ベストアルバムがリリースできるなら、ファンのみんなからの投票という形にしたかったし、このタイミングならセルフカバーだろって話が進んでいったんですけど、言うのは簡単でしたね。いや~、大変だった。

昔の方が簡単なことをしてるはずなのに、それが逆に難しくてね。“これ、どうやって弾いてる?”ってなったりしたね(仲宗根)

30曲ですもんね。わりと原曲に忠実なアレンジですが、やはり雰囲気はずいぶんと変わりましたね。

宮里悠平(G) 最初、アレンジしようって話になったから、かなり手を加えて持っていったんですよ。そしたら、なんかちょっと違うな、と。大きなアレンジで変化をつけるのではなく、今のHYを伝える感じにしていくべきじゃないかという話になったんですけど、変えるよりも、音源に忠実にしながら変化をつけていく方が大変でしたね。

仲宗根泉(Key, Vo) 昔の方が簡単なことをしてるはずなのに、それが逆に難しくてね。“これ、どうやって弾いてる?”ってなったりしたね。あと、「ホワイトビーチ」って、ライブで披露するVerは年々速くなってるんですよ。今のVerに合わせると(ベストの中では)速すぎる気がするからあえてテンポを落としてみたり。

名嘉 たとえば、信介のベースって初期の頃はループしてることが多いんですね。それもすごくいいんだけど、今のうねうねした感じもほしいから、その間をうまく表現してみよう、とか。

許田信介(B) どっちがいいかなってみんなで審議!審議!しながら決めていきました。

名嘉 ぼくも、ヒデも信介も、ファーストの頃から使い続けてる楽器はなかったんですが、唯一、悠平が当時のギターを1本だけ残してて。あれは、大活躍したね。

宮里 うん。ファーストの音にニュアンスを近付けるのが難しくて苦労してたのに、あのギターを使うだけで、馴染むっていうのかな。あれは、すごくおもしろかった。

当時、憧れのミュージシャンがいて、それに近づきたくて、自分の声じゃないものを出してるんですよね。今聞くと、番犬が吠えてるのかと思う(笑)(名嘉)

年数を重ねた変化といえば、「革命」なんて、当時ならではのヒップホップの構成で、同じように歌うのは大変そうですね。

名嘉 当時、憧れのミュージシャンがいて、それに近づきたくて、自分の声じゃないものを出してるんですよね。今聞くと、番犬が吠えてるのかと思う(笑)。

仲宗根 その頃は、その番犬の叫びをかっこいいと思ってたよ(笑)。

新里 ラップって、とくにわかりやすいよね(笑)。ただがむしゃらに思いを伝えるために声に棘を持たせて歌ってて。今は余裕を持って、あそびとスキルを混ぜて歌えてたりするからね。

歌詞に対しても、当時と今では解釈も表現も大きく変わりますよね。

名嘉 書くという意味では、こういう気持ちは今ではもう書けないなと思うものが多いですね。

仲宗根 今回、すごく思ったのは、「NAO」という曲は、親友のナオコの男がひどいやつだったので、いろんな人がこの曲を歌うことで、あいつが苦しめばいいと思って書いてたんですね。ナオコは、そのダメ男とはとっくに別れ、今は結婚して子供もいて、幸せな未来が見えてるから、今回この曲を歌うとき、今、こういう気持ちになっている女の子たちに届けばいいなという想いに変わってた。

同じ内容でも、乗せる感情が大きく変わった。

仲宗根 全然違ってた。男に向けた“コノヤロー”という尖った気持ちよりも、こういう経験をほかの女の子にはしてほしくないと思うから、今の「NAO」の方が温かい気持ちで歌ってると想います。

新里 そういう話だと、HYはメンバー全員が曲を作れるんで、レコーディング前に、どういう想いでこの曲を作ったのかを聴いて、その人の感情に寄せながら歌の世界観を作っていくんですね。その中で、「AM11:00」は、(名嘉)俊が夢で見た映像を歌詞にした曲なんですが、当時は歌えてるつもりでいたけど、その風景や言葉の意味をとらえ切れてなかったと思うんです。今回、Aメロで流れてくる風景をちゃんとかみしめながらレコーディングできたというのが、すごくよかったかな。

メロディーや歌詞が好きっていうだけでなく、自分の人生と重なる想いっていうのが、人の心に響くんだなって学びましたね(仲宗根)

ツイッターで収録曲にまつわるエピソードを書く「#私のHY」という企画をやっていますが、みんなの想いを読むと泣けてきますよね。私も、このベストを聴いているうちにいろいろと蘇る想いや風景がありました。

新里 みんな、こんなふうにこの歌を捉えてくれてたんだって驚くこともありましたね。

名嘉 学生時代や恋をしてるときって、音楽に救われたり、想いを重ねたりってことがすごくあるけど、正直、大人と言われる年齢になるとあの頃のように音楽について熱く語り合うことってないよなって思うんです。だから、みんなが僕らの音楽についてこんなに熱く、強く語ってくれるのはうれしくて、うらやましかったですね。今でも、スナックとか行くと必ず誰かが(仲宗根)イズの歌を歌ってくれたりするのも同じぐらい感動するけど。

仲宗根 私ね、男の人がキャバクラやスナックで、女の子と話をするだけなのに、どうしてそこにお金を落とすのか、そのメカニズムが知りたくなって、男友達に付き合ってもらって行ったことがあるんですよ。そしたら、席に着いてくれた女の子が身の上話をするでしょ。最初のうちは、彼女のバックボーンを知らないから普通に聞いてるんだけど、子供を育てるために仕方なく母親に預けて働いているんだとか、男がひどいやつでとか聞いていく中で、HYの曲が好きなんですって言われると、私の歌が癒しになるならって、そこで歌いましたよ。

一同 爆笑

名嘉 お前が歌っちゃうのか(笑)。

仲宗根 メロディーや歌詞が好きっていうだけでなく、自分の人生と重なる想いっていうのが、人の心に響くんだなって学びましたね。だから私、その話をもっと聞きたくて延長しましたし、“そうか、こういう気持ちになった男性が、次に行ったときにプレゼントとかするのか”と。でも、そういうのを見越して嘘をつく人もいるのかもしれないと思って、それを見極めるためにアフターまで行きましたからね(笑)。

名嘉 なんでだよ(笑)。

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