もはやロックもダンスも、生音も打ち込みも、“ORANGE RANGE”というジャンルの中で平和に共存している。3年ぶりのフルアルバム『ELEVEN PIECE』で聴けるのは、長いキャリアの中で体得した様々なスタイルの、ボーダーレスな融合だ。音や言葉に大人びた優しさや柔らかさが増し、それでいて青春のきらめきや毒のあるナンセンスを盛ることも忘れない。ORANGE RANGEはロックバンドとして、いい歳の取り方をしている。
取材・文 / 宮本英夫 撮影 / 関信行
自分たちの今の自然体が出てるのかな
ダンス、ロック、ダンス、ロック。まるで違う質感の曲が交互に出てくる、これってORANGE RANGEにしかできないアルバムだなあとつくづく思います。しかも、それが自然体で、まったく無理してない。
NAOTO たしかに。
アルバム全体のイメージというのは?
NAOTO 3年前の『TEN』と同じ方式というか、それ以前の『NEO POP STANDARD』(2012年発表)とか、『spark』(2013年発表)とか、極端じゃないですか。『TEN』がたぶん、それらが混ざったハイブリッドなやつだと思うので、今回もその感覚ですね。
完全打ち込みダンスポップの『NEO POP STANDARD』と、生音ロックの『spark』。両極端の世界観をミックスしたのが『TEN』でした。
NAOTO 結局、混ぜたほうが楽しいというか、何も考えなくていいんで(笑)。打ち込み系とバンド系と、分けて考えなくなったぶん、ラクになったというか。
YAMATOさん。アルバムについてどんな思いが?
YAMATO アルバムに向けてというよりは、目の前のことをひとつひとつやっていった感じですね。NAOTOが、その日のコンディションを一番気にしてくれるんで、自分はそれに応えて一生懸命やる。やり切れてないと思うものは、ひとつもないです。
メロディをしっかり歌う曲が、今回は多い気がする。
YAMATO そうですね。NAOTOが言っていたみたいに、『TEN』と同じ雰囲気がありつつも、曲自体にメロディアスなものが多い気がしていて。それは今のORANGE RANGEがそうなのかなって。そんなにラウドな曲もなく、激しい曲がどんどんできなくなっていく年齢的なものなのか……。
NAOTO 体力的にね(笑)。
YAMATO 自分たちの今の自然体が出てるのかなとか、ちょっと思ったり。

YAMATO
いいことじゃないですか。
YAMATO いい大人になっていってるのかなと思ったり……だから優しいし、ポップですよね。全体的に柔らかい気がする。
たしかにそう。「ワジワジ feat.ペチュニアロックス」以外は(笑)。
YAMATO 「ワジワジ feat.ペチュニアロックス」は……かわいいですね。柔らかさがある(笑)。
そうは思わないけど(笑)。でもこういう、ナンセンスでコミカルでブチ切れたヘヴィロックって、YAMATOさん得意技ですよね。
YAMATO まあ、得意分野ではあります。
「ワジワジ」にはペチュニアロックス、そして「Girl/Boy Song」にはソイソースがフィーチャリング。伝説の2大別キャラ、大盤振る舞いじゃないですか。
NAOTO 長らく出てこなかったけど、久しぶりに。なんかしらヘンなものができたら(名前を)付けるだけで、気分みたいなもんです。だから、あまり突っ込まれても困ります(笑)。
「これって何ですか?」と聞かれても。
NAOTO 「何でしょうね?」としか言えない(笑)。

NAOTO
でも「ワジワジ feat.ペチュニアロックス」はいい曲ですよ。行きたいお店が休みだったとか、観たいテレビが“一部地域を除く”で見られなかったとか、ものすごくちっちゃいレベルのメッセージソング。
NAOTO 怒り爆発ですよ。社会派バンドなんで(笑)。
初めて聞いた(笑)。でもたしかにこの曲、「あおり運転撲滅キャンペーン」と歌ってるし、ソイソースの「Girl/Boy Song」では「助け合いの心」とさわやかにコーラスしてるし。社会派っぽさは出てます。
NAOTO 本編の歌詞とはまったく関係ないですけどね。「Girl/Boy Song」の本編はYAMATOに書いてもらったんですけど、それ以前に「助け合いの心」というフレーズはあって。「そこは無視していいから、そこに連想しないでいいから」と言って、俺は部屋を出て行ったんですけど。
YAMATO いや、するだろ! どう考えても(苦笑)。
うん、あれは強力な、脱力フレーズですよ(笑)。
YAMATO 無茶ぶり感、ハンパないんですよ。「引っ張られないで」って言われても、そこを意識しないで書けるわけないだろうと。いつもそうですけど(笑)。
NAOTO でも、ちゃんとやってくれましたよ。「押すなよ! 押すなよ!」的な感じで(笑)。
いいコンビネーションだなあ。そんな作り方なのに、じんわり感動的な曲に聴こえてしまうのが悔しい(笑)。「見えないよ 触れられない 形無い それが愛さ」、めちゃいいフレーズですよ。
NAOTO それに引っ張られて、タイトルもあとから付けたんですけど。それまでは“助け合いの心”というタイトルだったんですけど、歌詞が男の子と女の子の話みたいになっていたから、これは変えようと。まんまとくつがえされましたね。だからどっちかというと、俺がやられた感じ?(笑)

HIROKI
HIROKIさんは、オレ要素が強い曲は?
HIROKI 詞の要素で多い曲もあれば、全然絡んでない曲もありますけど。多めなのは「Ryukyu Wind」「センチメンタル」「Happy Life」とかかな。「Happy Life」はリーダー(NAOTO)と一緒に作ってますね。
「センチメンタル」はとってもいい曲。懐かしい感じの歌謡曲ロック。
HIROKI これは2年ぐらい前からあった曲で、沖縄のバヤリースのCM曲として流れてたんですけど。ライヴでも演奏してないし、何の情報も出してこなかったから、ファンからは「あの曲はどうなったんですか?」って、この2年間ずっと言われてきたんですよ。
YAMATO その間に「Hopping」や「Ryukyu Wind」は出てるのに。
HIROKI そう。別の曲がどんどんリリースされるから、「あれはいったい何だったんですか?」って(笑)。やっと今回リリースできたんで、嬉しいです。「チラチラリズム」とかと同時期に制作していたこともあって、あんまり年相応な歌詞にはしたくなくて、脳内を10代に戻して、バカっぽさを意識しました。楽曲的にも、若さや勢いがあるから、それに沿って作りましたね。

YOH
YOHさんは、このアルバムにはどんな思いが?
YOH 自分の曲をひとりで進めながらだったんで、全体像はほとんど把握してなかったんですけど。ある程度固まったときに曲を振られて、そこで全体のことを見つつ、目の前のことをしっかりやるという感じだったかな。
ちなみにYOHさん曲は?
YOH 「大きな夢の木」です。今回も一曲だけ。これは2014年のホールツアーのときに作り始めた曲で、震災のことをどうやって曲にして届けられるかってずっと思っていて。支援活動だけじゃなくて、音楽の面でも自分のバンドで何かしら形にできたらいいなと模索しているなかで生まれてきた曲のひとつなんだけど、なかなか形にできなかったんですよ。
それがようやく今。
YOH 今年に入って、ある児童養護施設に行く機会があって、子供たちがどう過ごしているのか、大人たちがどう見守っているのか、歌詞はそこで感じたことにスポットライトを当ててます。施設で一緒に過ごさせてもらって、自分の中から出てくるものを全部詰め込んだ感じですね。4年経って形にできて、良かったなと思います。
YOHさんらしい大きな優しさのこもった、ソウルフルなロックチューン。でもメッセージはすごくリアル。
YOH 理由があれば歌詞も書けるんで。普通に「書いて」と言われても、俺はできない人なので。目の前で見た光景とか、感じたことがないと。

RYO
さあ、RYOさんは?
RYO 10曲目(「KONNICHIWA東京」)、11曲目(「Girl/Boy Song」)はほぼ関与してなくて、何も言えません(笑)。いつもそうなんですけど、リーダーから曲が送られてきたときに、自分のパートが空けてあって、テーマももらってたんで、入りやすいんですね。今回も早めに仕上げて、いつでも録れるようにしてました。