モリコメンド 一本釣り  vol. 78

Column

竹内アンナ 卓越したギタープレイと凛とした歌声。次世代型シンガーソングライターが放つ瑞々しい音楽

竹内アンナ 卓越したギタープレイと凛とした歌声。次世代型シンガーソングライターが放つ瑞々しい音楽

ロック、ソウル、ディスコ、ブルース、ジャズなどの多彩なルーツミュージックを10年代のポップスに昇華した楽曲、“アコギと歌”を中心にしたカラフルなサウンドメイク、そして、卓越したギタープレイとキュートなボーカル。彼女の音楽に触れた瞬間、その豊かさと瑞々しさにすぐに魅了されるはずだ。

シンガーソングライター、竹内アンナ。E.P「at ONE」でメジャーデビューを果たした彼女は、コアな音楽ファンと唸らせる音楽性と誰もが楽しめるポップネスを兼ね備えた、とてつもなく大きなポテンシャルを備えたアーティストだ。

1998年、アメリカ・ロサンゼルスで生まれ、京都で育った竹内アンナ。幼少の頃から親の影響でザ・ビートルズやアース・ウィンド&ファイヤーなどに親しんできた彼女は、BUMP OF CHICKENの「カルマ」に衝撃を受けたことをきっかけに音楽を志したという。その後、ジョン・メイヤーの「No Such Thing」のライブ映像を見つけ、“いまの練習ではダメだ”とさらにギターにのめり込んでいった。ジャズ、ブルースといったルーツミュージックを掘り下げ、さまざまな名曲をカバーし、それを自らの演奏に取り込む——そのことによって彼女は、ミュージシャンとしての基礎を築き上げたのだ。

中学1年生の頃から曲を書き始め、ライブ活動をスタートさせた彼女が音楽関係者の目に止まるまでは、それほど長い時間は必要なかった。2017年6月、1万組近くの応募があったソニー・ミュージックアーティスツとテイチクエンタテインメントらが主催したオーディションのグランプリを獲得。アコースティック・ギターとループを組み合わせたプレイスタイル、透明感と凛とした強さを併せ持った歌声が話題になり、翌年3月にはアメリカ・テキサス州オースティンで行われた大型フェス「SXSW 2018」に出演。同時に全米7都市でライヴ・ツアーを行い、アメリカのライブ会場だけで200枚近くのCDを売った。(スティーヴィー・レイ・ヴォーンのギターフレーズを置織り交ぜたアドリブ、ガンズ・アンド・ローゼズのカバーも披露、大喝采を浴びたとか)

古今東西の音楽をしっかりと血肉化し、現代を生きる20才の女性としてのリアルを込めながら、独創性と普遍性を備えた楽曲につなげる。そんな彼女の才能の在り方は、デビューE.P「at ONE」にも存分に発揮されている。1曲目の「Ordinary days」は、彼女が中学3年生のときに書かれた曲。友だちと離れる時期が近づき、そのときに感じた寂しさ、何気ない日常の素晴らしさに思いを寄せたナンバーだ。切なさと解放感を併せ持ったメロディライン、キレのいいギターリフ、心地よいグルーヴを含んだボーカルがひとつになったこの曲は、シンガーソングライターとしての彼女の特徴をわかりやすく提示していると思う。レコーディングは彼女の生まれ故郷であるLA。現地のミュージシャンとのセッションから生まれた風通しのいいバンドサウンドもこの曲の魅力だ。

2曲目の「ALRIGHT」は打ち込みをベースにしたダンサブルなナンバー。心地よい疾走感と描き出すトラック、“大丈夫、いけるはず!”という前向きな気分がひとつになったこの曲は、彼女自身の高校時代の思い出がもとになっている。夏の暑い時期、長い坂を自転車で下っていたときに感じた高揚感、「理由はないけど、絶対、大丈夫な気がする!」という無敵感。ティーネイジャー特有のポジティブな感覚を普遍的なポップソングへと結びつけたこの曲からは、彼女のソングライティング・センスの良さがはっきりと伝わってくる。

さらに好きな人との電話での会話をテーマに、“月と星がきれいな夜にはわたしに電話(TEL)して伝えてね(Tell)”という思いを込めたラブソング「TEL me」、TLCの名曲「No Scrubs」のカバー(ギターを中心にしたアレンジ、ラップを交えたボーカルも魅力的)も収録。4曲を通し、アーティストしての多面的な魅力を表現した作品に仕上がっている。

世界でいちばん好きな曲として、アース・ウィンド&ファイヤーの「セプテンバー」を挙げている竹内アンナ。どんなにつらいときでも、悲しいときでも、この曲を聴けば元気になれる——いつかは自分もそんな曲を作ってみたいという思いを抱え、彼女は自らのキャリアをスタートさせた。音楽に対する探求心と豊かなクリエイティビティ、ソングライティング、ギタープレイ、ボーカルの技術を併せ持った二十歳のシンガーソングライターは、近い将来、その夢を実現させるだろう。E.P「at ONE」を聴けば、誰もがそのことを確信するはずだ。

文 / 森朋之

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オフィシャルサイトhttp://takeuchianna.com

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