Interview

夏バテに効く超絶品スパイスレシピ!『おいしい&ヘルシー! はじめてのスパイスブック』カワムラケンジ

夏バテに効く超絶品スパイスレシピ!『おいしい&ヘルシー! はじめてのスパイスブック』カワムラケンジ

その界隈では、ずいぶんと名の知られた存在だ。先日『おいしい&ヘルシー はじめてのスパイスブック』を上梓したカワムラケンジは、世界初のバイリンガル・スパイス専門誌「スパイスジャーナル」(2010~2015)を手がけたスパイス料理研究家。料理人でもあり、文筆家でもあり、時にスパイスを追い求める探検家にもなる。

そんな彼の膨大な知識と経験をもとに、初心者にもわかりやすくスパイスの魅力を伝えてくれるのが本書である。本場インドで日常的に言われる「グッド・フォー・ヘルス」の考え方を軸に、身近なスパイスの歴史、効用、それを使ったレシピまでを紹介。日本の多くの家庭では、あくまで料理の味わいのアクセントとして認識されているスパイスが、実は生薬としても効き目があるというのは驚きだが、スパイスをめぐる物語は実際に計り知れないほどに深い。読むほどに、そして知るほどに、興味が湧いてくる1冊だ。

取材・文 / 斉藤ユカ

このあいだ、家にあるスパイスを数えたら120種類もありました。

©カワムラケンジ/幻冬舎

カワムラさんは、いわゆるスパイスオタクなんですよね?

それね、よく言われるんですよ。自分ではそうは思ってないんですけど、まぁ、好きは好きですよね(笑)。このあいだ、家にあるスパイスを数えたら120種類もありました。ただ、スパイスの概念ってはっきりしていないんで、200種類という人もいれば、1000種類以上あるという人もいる。何をもってしてスパイスというのか、っていう話になっちゃうんです。

読んで驚いたのが、私がハーブとして認識していたものが、スパイスとして紹介されているんです。両者は別ものだと思っていました。

でも結局、分けようがないんです。「スパイス」と言うと、例えば「人類」って言っているようなものなんです。人類の中には人種があって、さらに国籍だったりで細分化されていきますよね。スパイスもそういうもんです。あと、流通概念というのもあります。ヨーロッパでもインドでも物流なんかに携わるロジテックな人たちによれば、生がハーブで乾燥させてるものがスパイスだって言いますよね。でも、生のバジルやコリアンダーはスパイスじゃないのかっていうと、スパイスなんですよ。音楽のジャンルみたいなもんですよね。ソウルミュージックとブラックコンテンポラリーの違いはなんだ? と。つまるところ線引きができないので、総称してスパイスなんですよ。

日本での一般的なイメージとしては、葉っぱがハーブで種子がスパイスかなと思います。

僕もどっちかっていうとその感覚に近いかな。インド人でも同じこと言う人いますよ。食べられるものがハーブで、食べられないものがスパイスだって言ってたりもする。まぁ、僕の友人たちを見てるとインド人ほど、ほんまかいな? なヤツらはいないと思うんだけど(笑)、あそこは本場だから、まぁそういうもんかなと思います。

そこに生きる人々の体に、食べているものの匂いって染み付いてるんですよね。

本書ではカワムラさんのオリジナルレシピが多数紹介されているのですが、中でも3種類の基本スパイス(ターメリック、クミン、コリアンダー)で作るカレー粉はとても便利そうですね。

これは本当にオススメですよ。肉じゃがにこのカレー粉入れるだけでも美味しいです。インド人の普通のお宅に行っても、ほぼこれですから。ジャガイモとニンジンとシシトウなんかを、それぞれの家庭によって配合の違いはあれど同じ3種のスパイスで煮るっていうのが定番です。もちろんそこには地域性という違いも出てきますけど、だいたい同じですね。北インドではこの3種類を毎日使うんです。日本でいうところの味噌、醤油みたいな基本調味料ですね。そこの人たちの匂いですよ、この3つを合わせた匂いが。

ああ、外国人が日本に降り立つと醤油くさいって言いますもんね?

そうそう、空港からすでに醤油くさいってね(笑)。それと同じです。そこに生きる人々の体に、食べているものの匂いって染み付いてるんですよね。

カトマンズの旧市街を散策。撮影:カワムラケンジ

また、本書では各スパイスの薬効についても、レシピとともにわかりやすく解説してくれています。

効きすぎるぐらいですよ。生薬と同じです。漢方では副作用を防ぐために数種類を混ぜるんですけど、スパイスを使う料理もそうなんですよね。レシピなんか存在しないような、家庭で受け継がれてきた古い料理ほど、実は健康効果を考えて作られていたりするんです。

いわゆる医食同源ですね。

そうそう。本当、古い料理ほどよくできてるんですよ。ただ、難しく考える必要は全くなくて、ちょっと組み合わせを覚えればいいだけ。例えば、ターメリックはそれだけ食べても流出してしまうんだけど、コショウと一緒に摂ることで定着しやすくなるとかね。

今年もさっそく猛暑となっていますが、夏バテに効くスパイスもあるんですか?

ありますよ! たとえばグリーンカルダモン。これはインドの中でも砂漠が広がる北西部などでは守り神のような存在です。すーっと舌から喉、鼻にかけて、清涼な香りが駆け抜け、火照った身体をクールダウンさせると同時に、ぼーっとした頭がすっきりします。料理にももちろん使いますが、冷えても香りが残るので、ラッシーに入れたり果実振りかけたり多用しますね。

この本にも掲載した「スプーンで食べる赤いサラダ」は特におススメです(※レシピはインタビューの最後に掲載)。これにグリーンカルダモンを2,3振り加えていただくとベターかな。グリーンカルダモンは今や気軽なスーパーでもよく見ます。ホールをつぶして使うと香りは抜群。でもパウダーでも十分利いてくれますよ。このレシピはインド北西部の「ライタ」という料理をモデルに創作したものです。本場では殆どがヨーグルトで野菜は少ししか入れませんが、蒸し暑い日本には瑞々しい野菜がぴったり。そこにヨーグルトが入ることで栄養補給になるし、夏バテした身体でも食べやすい。現代日本の猛暑にイチオシです。


スプーンで食べる赤いサラダ

©カワムラケンジ/幻冬舎

材料(二人分)
スパイス
◎パプリカ……小さじ1/2
◎クミンパウダー……小さじ1/4
◎レッドペパーパウダー……少々

タマネギ……1/2個(1センチの角切り)
生トマト……1個(1センチの角切り)
キュウリ……1本(1センチの角切り)
カシューナッツ……大さじ1(1センチ幅に切る)
ヨーグルト……大さじ4
レモン果汁……大さじ1
オリーブオイル……大さじ1
塩……少々

作り方
(1)フライパンにオイルとカシューナッツを入れ加熱する。中火でこんがりと香ばしくなるように炒める。薄くキツネ色になったら火を止める。
(2)ボウルにタマネギ、キュウリ、塩、レモン果汁、スパイスの全てを入れて混ぜる。
(3)生トマト、ヨーグルト、(1)を混ぜたら出来上がり。


3種のスパイスで作るカレー粉も、実はとっても体にいい。

ふりかけみたいにも使ってもらえますよ。例えば豚まんの脂でちょっと胃がもたれるなっていう時にこのカレー粉をかけて食べたら、消化を助けてくれるんですよね。僕の経験では、胃腸の調子が悪い時には結構効くな。

個人的には、二日酔い防止のレシピをぜひ参考にしたいです。

ショウガがいいんですよね。和漢の人も、中医も同じように言っています。ジンジャーエールでもいいので、お酒飲む前に飲んでおくといいですよ。「カナダドライでどない?」って僕はしょうもないことを言うんですけど(笑)、本当にでいいですよ、数パーセントでもショウガが使われているものは。だからモスコミュールなんてカクテルは、実はすごく理にかなってるんですよね。

最低3種のスパイスがあればカレーは作れる。 ©カワムラケンジ/幻冬舎

まずオススメしたいのは、やたらめったらコショウを使うってことなんです。

体にいいスパイスの使い方を覚えると、料理の幅も広がりますね。

まずオススメしたいのは、やたらめったらコショウを使うってことなんです。まったく面白くないですけど、身近すぎて。どこにでもあるでしょ?  でもやっぱりね、知れば知るほどコショウはすごい。スパイス戦争で世界が狂乱しただけあるなって思います。コショウが合わないものってないですからね。味噌汁にさえ合う。アイスクリームやフルーツでもいいし、鰹節と醤油と粗挽き黒コショウをおでんに乗っけてもめっちゃウマイ!  知り合いの薬学博士が言ってましたけど、コショウは常習性があって、クルクミンの効き目も何倍にもなるって話なんです。

てことは、お酒を飲む前にウコン(ターメリック)とショウガを摂って、コショウの効いた料理をつまめばいいですね。

まさに(笑)。ぜひやってみてください。

オリジナルのカレー粉でさっと作れる魚のスピードカレー。 ©カワムラケンジ/幻冬舎

スパイスというとちょっと難しそうに感じますが、実は身近にもたくさんあるんですよね。唐辛子、ショウガ、ゴマ、ヨモギなんかも全部スパイス。セリやミツバなどの香味野菜もスパイスですよね?

そう、全部スパイスです。大葉なんかのパワーもすごいです。あと、わさび。

わさびも、今までスパイスと認識したことはなかったです。

イギリスの古いスパイス辞典は、ジャパニーズスパイスとして掲載されてるんですよ。本にも書きましたけど、わさびってめっちゃデリケートでべっぴんさんなんですよ。自分の毒素でほとんどが中毒を起こして大きくなれないんですって。肉付きのいいわさびが生えてる事自体が奇跡なんですよ。というようなことを「スパイスジャーナル15号」で特集しましたけどね(笑)。わさびを探し求めて、探検にも出たんですよ。

本書の「おわりに」の項に詳しいですが、カワムラさんって探検好きなんですよね。趣味が高じて作った「スパイスジャーナル」は自転車操業で日々大わらわなのに、それでもスパイス探検に出かけてしまうという(笑)。

自転車いつまで漕いでんねん、と(笑)。結局ほら、まずは身近な編集者に相談して、特集とか預かってやらせてもらったりして、そこで稼いだ数十万をつぎ込むという繰り返し氏だったんですよね。しょうもないですね(笑)。でも、やめられないんですよ、スパイスは。

すっきりした辛さで夏にぴったり。オクラとトマトのドライカレー。©カワムラケンジ/幻冬舎

インド料理とは何かって言ったら「感覚」と「時間」なんですよ。

インドをはじめて訪れたのはいつですか?

僕は遅かったですよ。30歳は過ぎてました。インド自体にはあんまり興味がなくて、ただスパイスや料理が気になってたんですよ。日本でいろんなインド人と知り合って、その時からこいつらは胡散臭いと思いつつ(笑)、だけど音楽や映画の豊かさというか、文化芸術の深みには感動させられっぱなしだったんです。そのバックボーンがあって、こんなにすごい料理ができてるのか、と。あんなにいい加減な奴らなのに料理の完成度が高すぎる! 彼らが使うステンレスの食器もね、最初は面白みがないなと思ったけど、実は抗菌作用を期待してのことなんですよ。水が良くない国ですからね。

すべてが理にかなっていた。

そうなんです。めちゃめちゃ合理的で。インドって、もしかして欧米よりもはるかに成熟してるんじゃないかと思いましたね。

ラージャスターン州のマーケット。カルダモン入りラッシーの専門店も。撮影:カワムラケンジ

本書で紹介されているレシピも、インド料理がベースになっているんですか?

大元を辿れば、インド、ネパール、中国、そのあたりの料理である、という感じですけど、僕があれこれ手を加えたオリジナルかな。あくまで日常的に入手できて、簡単に使えるスパイスのことを主に紹介しているので、本国の本格的な料理というよりは、できるだけオリジナリティのある、少しコミカルな一皿を作ってもらえたらいいなと思ってレシピを選びました。最近ではスーパーに行けばいろんなスパイスを買えるようになりましたから、その辺も加味して構成したつもりです。ただ、創作料理という意味では、インド料理ですよ。

というと?

僕に言わせてもらうならば、インド料理って何かといえば創作料理なんだと思っています。言い換えるなら、それは「感覚」と「時間」なんです。インド料理を美味しくするのは時間なので、最近日本でよく言われる時短とは真逆の考え方ですよね。「感覚」というのはインド人のお母ちゃんが、自分のお母ちゃんから受け継いでよくわかってること。実は、日本のお母ちゃんだって、かつてはみんなわかっていたことなんです。それを今アレンジしたら、5分や10分でできる料理もあるよってことで、今回は本に反映しました。ぜひ試してみてもらいたいですね。

撮影:東谷幸一

カワムラケンジ

スパイス料理研究家。1965年大阪生まれ。多岐にわたる飲食現場を経験。とくにスパイスに興味を持ち、1980年代に本格的な研究をはじめる。スパイスの真髄に触れ、1998年にインド料理店「THALI」を開業。本格的なインド料理とクリエイティブな才能を活かし人気を博す。20代後半から執筆活動も開始。2010年、世界で初のバイリンガル・スパイス専門誌『スパイスジャーナル』を創刊(2015年1月まで)。薬学博士、薬剤師、栄養管理し、ヨーガ講師たちと共に、多角的なスパイス研究に取り組んでいる。スパイスをテーマにしたレシピ開発や取材をはじめ、雑誌掲載やTV出演も多数。著書に『絶対おいしいスパイスレシピ』(木楽舎)がある。

オフィシャルサイトhttps://www.kawamurakenji.net
Twitter@spicejournal
Instagram@kenji.kawamura

書籍情報

『おいしい&ヘルシー! はじめてのスパイスブック』

カワムラケンジ(著)
幻冬舎

スパイス生活を始めると、心も身体も元気になる! ちょい足しにも、本格料理にも! いま大注目のスパイス料理を、簡単・すぐ・おいしく! Chapter1 スパイスは身体に効く/Chapter2 はじめてのスパイス/Chapter3 覚えておきたい14種類のスパイス/Chapter4 体調別・身体が喜ぶスパイスレシピ

関連サイト

幻冬舎plus
http://www.gentosha.jp/category/hajimetenospicebook