黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 18

Interview

ファミ通表紙 松下進氏(中)イラストレーターとして独立、そして独学の下積み時代

ファミ通表紙 松下進氏(中)イラストレーターとして独立、そして独学の下積み時代

誰もやりたくないようなものだったら、まだそんなにやっているヤツはいない

アラン・オルドリッジ(注21)の展示館をご覧になったんですよね。

注21:イギリスのアーティスト。サイケデリックな作風で人気を博し、ビートルズのソングイラスト集のほか、エルトン・ジョンやザ・フーのアルバムジャケット、絵本『バタフライ・ボール』など数々のイラストを手がけた。

松下 はい、池袋の西武百貨店でね。たまたま電車の中吊りかなんかで広告を見かけたんですよ。当時はビートルズがバァーッと出てきた時代で、そのビートルズのソング集なんかのイラストで有名な、あのアラン・オルドリッジの原画展があるっていうんで見に行ったんです。そうしたら、とにかく色彩の洪水状態で、色が流れ出してくるっていうか。ハッキリ言ってドラッグみたいな世界観でしたから「すげえな、これ」って。しかも、みんな絵が大きくて、これはどうやって描いているんだろうってなったんです。

塗っている感じじゃないですよね。

松下 違いますよね。で、たまたま僕の横でふたりぐらいの人が見ていたんですけど、その人たちが「このエアブラシって大変なんだよ」とか話しているわけです。それで、横で聞き耳を立てていたら、その中のひとりが、「これ、いちいちマスキングしてさ、どうこうでさ」、「これで絵を描くのってすごいよな、こんなのやる気しねえよな」とか言っているんですよ。それを聞いて僕は「これだ!」と思ったんです。誰もやりたくないようなものだったら、まだそんなにやっているヤツはいないな、と。

なるほど。

松下 それで、その原画展を見た帰りに画材屋さんに行って、エアブラシのセット一式を買ったんです。店にけっこう詳しい人がいたので、何があればできるのか教えてもらって、それを全部買って、すぐにやってみたんですよ。それで、「なるほど、グラデーションって、こうやって作れるんだ」ってなって、マスキングも本格的にやり始めて。もちろん、最初は全然上手く描けなかったですけどね。多分、一番最初に描いた絵はどこかにしまってあると思うんですけど、今見たらとんでもないでしょうね(笑)。

すべて独学、どうにかして自分のものにしきゃいけないと試行錯誤

それは独学だったんですか?

松下 独学です。だって、今みたいにググっちゃえばいいとか、本があるとかっていう時代じゃないですから。まったく何も分からない状態から始めました。でも、やってみると、やっぱり面白いわけですよ。どうにかして、これを自分のものにしなきゃいけないと試行錯誤していって。だから、何年もかかりましたよね、今の自分なりのやり方にたどり着くまでに。

それで、そういったポートフォリオを持って集英社、小学館、平凡出版(現マガジンハウス)などを回られたわけですよね。

松下 平凡出版はね、恐れ多くて行けなかったです。

え、そうなんですか?

松下 なんだろう、あんまり自分の発想の中になかったですね。当時は集英社の新しく出た雑誌の編集部なんかが、売り込みやすいんじゃないかなっていうのがありましたね。それで『MORE』(注22)とかに行ったんですけど、そこの主任だったか、副編集長だったかな。その男性に「ああ、こういう感じね。ちょっとなあ」とか言われたんで、これはダメだなと思って。『プレイボーイ』(注23)にも持っていきました。月刊の方ね。でも、担当のヤツが「分かりました、じゃあ置いといてください」とか言って、見てくれもしないんです。で、ソイツがのちにね、『ヤングジャンプ』の編集にくるんですよ。

注22:集英社が発行しているフェミニン系の女性向けファッション雑誌。20~30代のOLを主要ターゲットとしている。

注23:集英社が発行していた男性向け月刊誌。アメリカの人気雑誌 『PLAYBOY』の日本版として創刊され、オピニオンリーダー誌として人気を博したが、2009年1月号をもって終刊となった。

おお、それはすごい。

松下 それで「覚えてる?」って言ったら、「え、なんですか?」って。そのあと、その彼は絵本の仕事とか一緒にやってくれたりしたんですけど、最初はそんな状態でした。笑っちゃいますよね。お前、こんな偉そうだったのに・・・・・・って(笑)。まあでも、当時の月刊『プレイボーイ』って大変なところでしたからね。

あの頃はステイタス・マガジンみたいな感じがありましたよね。

松下 そうです、そうです。まあ、そうやっていろんなところに売り込みに行って、あまりメジャーじゃないような雑誌社から仕事をもらったりしていたんです。

最近の愛車FIAT500と


続きは第3回インタビューへ
7月18日(水)公開予定

ファミ通表紙 松下進氏(下)『POPEYE』『ヤングジャンプ』そして『ファミ通』~時代のトレンドへ

ファミ通表紙 松下進氏(下)『POPEYE』『ヤングジャンプ』そして『ファミ通』~時代のトレンドへ

2018.07.18

著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

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