Interview

スペシャル座談会『ウマ娘 プリティーダービー』 アニメファンを驚かせ、競馬ファンをも感動させた話題作を4人のキーパーソンが語る!

スペシャル座談会『ウマ娘 プリティーダービー』 アニメファンを驚かせ、競馬ファンをも感動させた話題作を4人のキーパーソンが語る!

“ウマ娘とはなんぞや?”の模索の日々

石原 及川監督にはもちろんストーリーを決める部分から参加してもらいました。その時点ではキャラクターイラストとキャラ設定資料、あとトレセン学園(ウマ娘たちが通う全寮制の学園)の設定が数点あるだけで、アニメは本当に一から作りました。

橋本 確かCygamesさんがゲーム用に作ったイメージボードみたいなものがありましたよね。そこからイメージを膨らませて。

石原 ゲームは基本一人称視点で、ウマ娘用の電話や駅は出てこないので、アニメのために考えないといけないところがたくさんありました。

伊藤 ウマ娘が普通の競馬と同じようにパドックを歩いていたらさすがに変じゃないですか、っていう意見もありましたね(笑)。

石原 みんなパドックをウロウロしているだけなのは、流石に変ですねと(笑)。具体的なレーススケジュールを考えると「ココはどうすればいいんだ?」っていうのが考えれば考えるほど出てきて、そこを固めるのに時間がかかりました。

『ウマ娘』の舞台となるトレセン学園の背景ボード素材(ゲーム内で使用されるもの)

こちらは学園内の教室の様子(ゲーム内で使用されるもの)

橋本 馬のその日の状態を見るのがパドックとした時に、馬をウマ娘に置きかえると、ランウェイを歩くモデルさんはどうだろう、みたいな感じでしたね。

伊藤 そもそも競馬自体、説明しなければならない事柄が多いんですよね。専門用語も多いですし、馬に関する情報やレースの時期とか……例えば「安田記念だったら6月でしょ」とか、「ダービーは一生に一回しか出られないんだよ」とか、競馬好きな人なら当たり前の情報も、競馬を知らない人にはわからないので。競馬を知らない人たちのために説明する必要もありました。

石原 当初はもっと“If”な成分多めで考えていました。レース名は実際の物を使いますけど、レース展開に関してはもっと架空の展開でハラハラさせよう……みたいな。実際の情報をどこまで取り込むのか、というバランスは段々とすり合わさって今の形になったという感じですね。

伊藤 アニメ『ウマ娘』に最初に触れる競馬ファンという役回りでしたので、自分自身のアイデアもそうですが、その方向性で競馬ファンが喜んでくれるかのジャッジに関しては任されていたように思います。

石原 伊藤さんからOKをもらえればきっと競馬ファンの方には怒られないかな……と、判断をお任せしていました。

伊藤 僕は競馬ファンですし、石原さんはキャラや心情を大事にしたい方で、及川監督は隙あらばギャグを入れようとするし、それを制作するのがP.A.WORKSさんという。

及川 石原さん、伊藤さんにOKをもらえそうな範疇で小ネタを入れ込んでいきました(笑)。

スペシャルウィークがヒロインに選ばれた理由

ストーリーに関しては、日本人が大好きなスポ根要素も入っており、次の展開を予想しながら楽しんで観ることができた本作。そんなストーリーがどのように作られたかというと、物語を構成するのに必要な様々な要素を、それぞれ別の角度から見ることが出来るスタッフが集まったことが大きかったようだ。

スペシャルウィークがヒロインとして選ばれたのにはどういった理由があったのでしょうか? また、スポ根の要素も盛り込まれていますが、ストーリーはどのようにして決まったのでしょうか?

伊藤 ゲームのプロモーションの際、トウカイテイオー、サイレンススズカ、スペシャルウィークがメインになっていて、どのウマ娘ももともと人気のある名馬なのですが、スペシャルウィークは特に競馬が盛り上がっていた時期の馬で、何よりもライバルの馬がたくさんいたことが理由ですね。同期にはセイウンスカイがいましたし、他にもエルコンドルパサー、グラスワンダーといった時間差でライバルがいて凄く魅力的です。競走馬をモデルにアニメを作る上では、やっぱり史実の関係性が重要だと思うんですよ。そういった要素が詰まっていたのがスペシャルウィークだったんです。

石原 ただあくまでモチーフになっている馬がスペシャルウィークであって、その当時の空気感は使いつつ、舞台は“現代的な異世界”という設定にしています。現代の競馬場を参考にして描いていますし。

伊藤 その設定にした時、第5話の日本ダービーで実際には走らなかったエルコンドルパサーを走らせようとか色々なアイデアが出てきたので、スペシャルウィークにして良かったなと思っています。

石原 トレーナーに関しては、ウマ娘とトレーナーとの関係性を描かないと世界観がわからないだろうということで登場させることになりました。

伊藤 及川監督にとっては、ご自身がスタッフとして参加されていた『バトルアスリーテス 大運動会』(※1)という作品のイメージが近かったかもしれません。『大運動会』もスポ根なので、その時点で監督の中にもみんなと同じようにスポ根のイメージがあったんだと思います。

橋本 弊社でもこれまでに部活物はやっていましたが、スポ根物は初めてでした。さらに『ウマ娘』では、メインキャラもその周りもとにかく女の子がたくさん登場するので、女の子をいかに可愛く格好良く描いていくか、という部分を大事にしました。

石原 今回のアニメ制作メンバーって、出会うべくして出会ったというより、なぜここにいるんだ? っていうくらい、向いている方向が違う人たちだったんですよ(笑)。及川監督はシュールなギャグを愛してますし、P.A.WORKSさんも普段制作されている物とはイメージが違いますし。

及川 僕も、『ウマ娘』はどう作ってもP.A.WORKSさんらしさが出ないんじゃないかなと思ってました(笑)。

石原 結果的にはみんなの得意なジャンル・方向性がむしろバラバラだったから、逆にうまく破綻せずにまとまったのかなと思います。実際、「無理~」は完全に監督の趣味です(笑)(※2)

※1 『バトルアスリーテス 大運動会』
50世紀という未来を舞台にスポーツエリートが参加するスポーツ大会「大運動会」を目指して活躍する少女の姿を描いた作品。1990年代にTVアニメやOVA、ゲームなど様々なメディアで展開された。

※2 「無理~」
レースシーンでモブキャラが追い抜かれる時に毎回決まり文句のように発するセリフ。

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