Interview

THREE1989 試行錯誤を経て独自のポップ・サウンドを見出した3人組は、その先に何を見通しているのか?

THREE1989 試行錯誤を経て独自のポップ・サウンドを見出した3人組は、その先に何を見通しているのか?

海外シーンのR&Bやジャズの最先端サウンドに反応して、それを日本的に洗練させたポップ・サウンドを展開するいくつかのグループがデジタル・ネットワークのなかで注目を集めているが、この3人組もそうしたトレンドの渦中にあるグループのひとつだろう。加えて、ボーカルShoheyがNetflix/フジテレビ系の人気番組「テラスハウス オープニング ニュードアーズ」に出演し、さらに注目度が高まっている。
ここでは、THREE1989としてのデビュー曲にしてブレイクのきっかけとなったナンバー「High Times」誕生までの試行錯誤と、そこで得た確信をさらに進めた最新作『JET BLUE』について、メンバー3人に訊いた。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 高木博史

この3人のステージを思い浮かべたときにそれぞれが違うというのは面白いなと思ったんです。

まずは、結成のいきさつから聞かせてください。

Shohey まず、みんな1989年生まれで歳は同じなんですけど、出身はバラバラで、たまたま上京してきたタイミングが同じで、しかも同じ音楽の専門学校に通ってたんです。で、卒業する時期に「これからどうする?」みたいな話をしてるときに、Datchくんが「夏フェスに出たいから、一緒にやろうよ」と声かけてくれて、それでやり始めてみたらウマも合うし、すごく楽しいから、「せっかくだから、紅白とか目指してやろうよ」ということで、本格的にやり始めたということですね。

Datch 自分は、その学校にいる頃から、この二人と一緒にやりたいとずっと思ってたんですよ。二人とはクラスは違ってたんですけど、同じ年に入った人たちの発表会みたいなことが何度かあって、そこで二人のパフォーマンスを目にして、それぞれに個性というか、自分から見てすごくいいなと思う部分がそれぞれにすごくあったので。

Datchさんから見ていいなと思った、それぞれの個性というのは?

Datch Shoheyくんは圧倒的な歌唱力と声の良さ、それにフロントに立つ人としての人を惹きつける力みたいなものを感じたんです。Shimoはすごい音楽一家だったみたいで、彼自身小さな頃から音楽に触れていたので、いろんな楽器が演奏できるし、音楽的な知識や経験もすごく豊富だったので…。あるものを1から10に伸ばすのはわりとできるかもしれないですけど、ゼロから1にするのはすごく難しいと思うんです。彼はそれができる人なんですよ。独自の発想というか、音楽家として生まれ持った独特の感覚みたいなものをすごく感じるんですよね。

逆にShoheyさんとShimoさんは、違うクラスの人から一緒にやろうと声をかけられて、戸惑いはなかったですか。

Shohey いや、僕もDatchくんには興味を持ってたというか、その発表会ではアコースティック楽器で弾き語りやったり、音源を作って歌ったりという人がほとんどだったんですけど、彼は身体中に電飾を付けて暗闇で光らせるっていうダフトパンクみたいなことをやったりとか、そういう独特の発想みたいなものをめちゃくちゃ感じて、どういう人なんだろう?って気になってたんです。そしたら、学校に行く途中にDatchくんが声をかけてくれて、すぐ一緒にやることにしました。

Shohey(Vo)

Shimo 僕はDTMが好きで、そこがクラスは違うけどDatchくんと共通するところで、だから曲ができたら聴かせ合ったり、いろんな情報交換をしたりしてたんです。で、学校を卒業するときに僕はその後の進路について何もアテがなくて、そこに声をかけてくれたから、実家に帰るよりは一緒に音楽をやるほうが楽しいかなと思って…。

Shohey 実家に帰るんじゃなくて、世界一周にいくつもりだったんでしょ?

Shimo そうなんですけど、お金もなかったんで(笑)。

(笑)、それぞれの話を聞いていると、Datchさんが言われた「個性」ということもわかるような気がしますが、それも含め、Datchさんとしてはスタジオにこもってシコシコ音源を作るだけの活動ではなくて、人前で生身の人間が演奏して伝わるものを大事した活動を想定していたんでしょうか。

Datch そうですね。そういう意味でも、この3人のステージを思い浮かべたときにそれぞれが違うというのは面白いなと思ったんですよ。それに、音楽的なルーツも違うから、ひとつの音楽を共有して活動を始めるバンドとは違うものが作り出せるんじゃないかなと思ってました。

逆に言えば、最初のところで音楽的な方向性を定めて始めたわけではなかったということですよね。

Datch そうなんです。だから、後々そういったところで苦労もすることになったんですけど。それぞれがいろんな音楽をできてしまうので。そのなかで、どういうものを軸にして活動を進めていくのかということについて、悩む時期はありましたね。

「High Times」という曲はやっと世の中に出せる音楽を作れたなという手応えがありました。

その試行錯誤の過程の話も聞きたいんですが、この3人で音楽を作ることになって、まずどんな音楽を作ろうと考えたんですか。

Shimo 僕は最初は、いろんな音楽を作りたいという気持ちがまず根本にあって、だからいちばん最初の時期に作ったものがどっちつかずの感じだったのは僕に原因があるかもしれないですね。例えばロックの要素もジャズの要素も入れたいと思って作ると、やっぱり出来上がるものがジャンルとして定まらないものになってしまってたんですよ。

Shohey 最初に組んだときには、Datchが元々やってたダンス・ミュージックに僕の歌を乗せてShimoがキーボードを弾いてライブやろうかという話で、まずはDatchの曲をモチーフにしていろいろ広げていったんですけど、それだけじゃなんだか面白くないなということで、もうちょっとパフォーマンスに力を入れようという話になったんです。それで、3人で振り付けしながらお客さんと一緒にダンスを踊るエンタメ集団みたいな感じでやってたんですけど、それも「何か違うな」という話になり、グループ名をいまのTHREE1989にしようという話が出てきたタイミングで、一度じっくり話し合ったんです。

グループの方向性について話し合ったんですか。

Shohey そうですね。Datchは、クラブでDJもしてるしダンス・ミュージックが得意、Shimoはロック/ジャズ畑の人で、僕はブラック・ミュージック全般をずっと聴いてるという3人だから、Datchのダンス・ミュージックというところに偏り過ぎず、パフォーマンスというところにも偏り過ぎず、3人に共通する大きな円のなかで作っていくのはどういう音楽がいいんだろうね?っていう。そこで、みんなの考えがまとまったのがいまのTHREE1989がやっているような音楽、敢えて簡単に言ってしまえばシティ・ポップということになるんだと思うんですけど、そこのところを極めていこうという話になって、それで作ったのが「High Times」だったんです。

名前を改めようとか、一度じっくり話し合おうということになったりという気持ちの流れになったそのタイミングは、3人のなかで何か機が熟したような感覚があったんでしょうか。

Shohey いまから思うと、前の名前でやってたときには音楽的な方向性よりも先に、例えば「紅白を目指そう」みたいな目標を決めちゃったりしてたんで、だからいろんなものに手を出して、曲ごとにジャンルも違う、というようなことになってたんだと思うんです。3人のなかにも、“もっとこういうことをやりたい”という不満がそれぞれあったと思うんですけど、そのじっくり話し合ったときは“このままだったら、もう無理じゃない?”という気持ちもあったから、みんな本気で意見を出し合って、そこで初めて真剣に向き合えたというか、そこからは3人がそれぞれ自分のできることをすべてTHREE1989に注ごうという気持ちになったし、そうして出来上がった「High Times」という曲はやっと世の中に出せる音楽を作れたなという手応えがありました。

Datch 自分としては、この3人で作る音楽はジャンルにかかわらず、とにかくいいという感覚が自分のなかにはっきりあるんですね。ただ、どう世に広げていくかという意識が自分たちには足りなかったのかなと思うんです。「High Times」がiTunesのダンス・チャートで5位になるまでは、アルバムも自主で作って、どちらかと言うと身内で完結してしまってたんですけど、「High Times」が世間に評価されたことで自信になったというか、自分としてはこの二人を信じてずっとやってきたことが間違ってなかったなと思ったんですよね。

Datchさんが言われた「どう世に広げていくか」ということについて、「High Times」の結果が自分たちの進むべき道をわからせてくれたということでしょうか。

Datch 「High Times」までは無我夢中というか、とにかく自分たちがいいと思うものを作るという感じだったんですけど、「High Times」で自分たちがやりたいと思っているものと世の中が求めているものというか時代感みたいなものが一致した感覚はありましたね。

Shimo 僕は「High Times」ももちろん大きかったんですけど、その次に出したミニアルバム『Time Line』が仕上がったときに、ようやく自分たちの色付けが決まってきたかなという感じはありました。「High Times」1曲だけだといろんな受け取り方もできたと思うんですけど、『Time Line』は8曲入りでしたから。

Shimo(Key)

そこで定まった色付け、THREE1989のカラーを敢えて言葉で説明するとすれば、どういう言い方になりますか。

Shimo 僕らが聴いてきた音楽というのは、マネのマネのマネくらいだと思うんです。いろんなフィルターを通って出てきた音楽というか。そういう意味では、僕ら音楽は白とか青とか赤とかが混ざった黒色の音楽、という感じでしょうか。いろんな色が混ざったブラック・ミュージック、というのがTHREE1989の音楽なんじゃないかなと思います。

聴き手を意識するというよりは、やっぱり自分が聴きたいものを作るという意識だったように思いますね。

そういうふうに自分たちのベースが定まって、さて今回の新作に向けてはどういう意識で臨んだんですか。

Shimo 『JET BLUE』というタイトルも表れているんですけど、JET、つまり噴出するとか勢いのあるもの、楽曲に対しても攻めのアプローチというか、前作の『Time Line』で方向性がまとまったとしたら、そのポップさは崩さずに楽曲の構成とか音作りの部分でちょっと逸脱していくような感じも表現したいなと思っていました。

今回の収録曲は、詞曲はすべてShoheyさんですが、Shoheyさんはどんなことを意識して制作に臨みましたか。

Shohey 前作まではどちらかと言うとラブ・ソングは頭の中で考えたことというか妄想の部分が強かったりしたんですが、今回は実際の場面で自分が感じたことから広げていきたいなと思っていたし、その一方で宇宙をテーマにしたような内容も出てきたりしていたので、ちょっとSF風の物語のような歌詞も書きたいなとか、歌詞の部分ではそういうことに挑戦していきたいなと思ってました。ただ、僕のなかでは「High Times」でTHREE1989の芯ができたと思っているので、今回もこれからも、そのベースの部分は変わらないと思っています。

歌詞の部分であげてくれた2つのポイントについてですが、まず自分の体験や実感に引きつけたラブ・ソングを書こうと思ったのはどういう気持ちの流れだったんでしょうか。

Shohey 「High Times」のときはカノジョがいたんですけど、今回作ってるときはいなかったんで、“いいな”と思う女性に出会うと、その人をテーマにして書くということが増えたんだと思います、多分(笑)。

(笑)、宇宙をテーマにしたものが出てきたことについては、何か思い当たることはありますか。

Shohey Shimoがけっこう宇宙に興味を持ってたりするので、毎日会ってるなかで「宇宙ってこうなんだよ」みたいなことが刷り込まれて(笑)、それがサブリミナル効果みたいな感じになってるのか、星の名前とか乗り物の名前、あるいは神秘的なものからインスパイアされることに多くなってきて、そういうことになっているのかもしれないですね。

いまの2つの話は、Shimoさんとの関わりも含めた自分のなかからのモチーフの話でしたが、「High Times」からさらにより広く聴いてもらうには?みたいに、聴き手を意識した部分は何かありましたか。

Shohey 聴き手を意識するというよりは、やっぱり自分が聴きたいものを作るという意識だったように思いますね。自分が聴いて気持ちいい、かっこいいと思うもの、それにTHREE1989になってからは40歳、50歳になっても歌えるものを作りたいと思えているので、そういう意味で聴いてて恥ずかしくないもの、という感じでしょうか。たくさんの人に聴いてもらいたいという気持ちはもちろんあるんですけど、でも以前はその気持ちがデカ過ぎてあまり伝わらなかったんじゃないかと思ってるんです。逆に、いまは宇宙をテーマにしていても気持ちの上ではある一人の人に向けて書いているので、だからこそ伝わるようになったんじゃないかと思っています。

Datchさんは、今回の制作にはどんなことを意識して臨みましたか。

Datch 詞と曲に関してはShoheyくんに任せていて、Shimoがアレンジのコードに関する部分をいろいろ考えてくれるから、僕は音の部分、ドラムのキックやスネアの音、あるいはどういったプラグインが使われているのか、どれくらいの音数でアレンジしてるかとかといったことを海外のチャートをすごくチェックして臨みました。曲全体のストーリー以外の部分で、聴いている人に面白いサウンドだなと思ってもらえるようなものを盛り込みたいなということですね。

Datch(DJ)

出来上がってみての手応えは?

Datch 想像してたよりもまとまってるというか、作り始めるときにはもっとバラバラな感じになるかなと思ってたんです。曲ごとに挑戦的なアプローチをって考えてたんで。でも、そういうことを意識しながら、同時に自分たちが核としているものもちゃんと表現できたので、こういうまとまりのある仕上がりになったんじゃないかなと思うんです。今回は全部、Shoheyくんが持ってきた歌詞とメロディなわけですけど、そこに核の部分というか、THREE1989のポップな部分というのが表れてるんじゃないかと思いますね。

アルバム・タイトルにはどういう思いを込めたんですか。

Shohey これはShimoが出してくれた案なんですけど、「いま、跳ねたいよね」みたいな気持ちがあって出てきたものだと思うんです。だから、このタイトルはアルバムの内容を意味するというよりは、“このアルバムを通してどうしたいか?”とか“今後、僕たちはどうなりたいのか?”というようなことについてのイメージということだと思っています。

具体的に、来年の今頃にはTHREE1989はどうなってると思いますか。

Shohey 大きな目標として、この『JET BLUE』か、もしくは次のフルアルバムでレコード大賞のアルバム賞を獲りたいねということと、この年末か来年には六本木のビルボードでライブをやりたいねという話は3人でしました。

最後に、今後“俺はTHREE1989で成功したな”と思う場面があるとしたら、それはどういう場面だと思いますか。

Shimo 僕はいまでも時々そう思うことがありますよ。というか、このグループをやってて良かったなと思うことが成功だとすれば、ふとした瞬間に思うことがありますね。

Datch 僕は、特に音楽をよく聴くわけじゃない人から声をかけられたり、音楽じゃない部分でも日常的にTHREE1989を感じてもらえるようになったら、成功というかうれしいなと思いますね。

Shohey 僕個人は相変わらず紅白に出られた時が成功かなと思ってますが…。でも僕たちは、かっこいい音楽を作るのは大前提ですけど、いろんなことに挑戦していきたい3人の集まりだと思っているので、Datchくんが言ったみたいなポップな存在になるということがやれたら、それはすごい成功だと思いますね。

期待しています。ありがとうございました。

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THREE1989

Shohey(Vo)、Datch(DJ)、Shimo(Key)。デビュー曲となった配信シングル「High Times」がいきなりiTunesダンス・チャートで5位を記録。それ以降にリリースした楽曲も合わせ、多くのプレイリストで取り上げられるなか、2017年8月には全国流通自主制作1stアルバム『Time Line』をリリース。翌18年4月25日には、人気曲「「UNIVERSE」のKAN SANOリミックスを含むミニアルバム『JET BLUE』をリリースする。

オフィシャルサイト
https://www.three1989.tokyo