黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 14

Column

ゲームクリエイター小口久雄氏が語るエンタメ論(下)今後のエンタメのキーワードは「アナログ」

ゲームクリエイター小口久雄氏が語るエンタメ論(下)今後のエンタメのキーワードは「アナログ」

社長に・・・って言われてから受けるまで1年かかった

セガの社長になられたのは2004年ですよね。

小口 そうだね。で、別々になっていた開発会社を僕の命令で再吸収したの。

あれはやっぱり小口さんの意志だったんですか。

小口 僕の意志です。僕が社長になったから、みんな来いって。でないとコントロールできないんで。

抵抗勢力とかはなかったですか?

小口 どこもあまり利益出てなかったからね。なので、割とすんなりだった様に思う。どちらかというと喜んでたんじゃないかな。僕がうるさく言わないのはみんな分かってるし。

なるほど。でも、あの頃のセガの社長になるって火中の栗を拾うようなものだったと思うんですよ。大変な時期に社長になったという気はしなかったですか?

小口 したよ。だから、社長に・・・って言われてから受けるまで1年かかった。

1年かかったんですか。それはなぜですか?

小口 いや、僕はクリエイターだから……(笑)。

……そこでお互い言葉に詰まるところがアレなんですが(笑)。いや、そうですけどね。

小口 プレイングマネージャーまではちょっと手に負えないなと思ったの。

やっぱり現場がお好きですか。

小口 だって今も開発やってるし。だから、セガの社長を受けたときも僕が開発を見るっていうのを条件にしたわけ。そこを外されたら僕がやる意味はないんで。

単なる経営者じゃイヤだと。

小口 イヤだっていうより僕の能力はソコじゃないんで。だって社長になったとき、僕はPL(損益計算書)もBS(貸借対照表)も分かってなかったんだから。

小口 なので、そういったところは得意じゃない。それを僕に期待されてもそうじゃないですよと。エンタメコンテンツ事業はヒットゲームを作る事が重要。これができなきゃPLやBSをいくら眺めて、あれこれ考えてもしょうがないでしょ、ってこと。

今の小口さんは子供の頃から遊んできたゲーム機、学生時代にハマったある種のギャンブルっぽいもの、そうしたものを含めたものを総合してやっているわけですよね。今までの経験が一番生きている感じがしませんか?

小口 そうだね。まあまあ面白いけど、やっぱりゲーミングは楽しさの幅が狭いからね。

これを形にしたら長い間お世話になったセガを卒業しようと思っている

あ、幅が狭いですか。

小口 うん。やっぱりゲーミングのお客さんの目的って1つだから楽しさの幅は狭い。そこが狭いから作りやすいんだけどね。だから、どのメーカーも同じようなものになりがちで、差別化が非常に難しいというのはあるよ。今の会社も設立6年目で今年は北米(ネバダ)にチャレンジの年。ここ迄大きな投資もしてもらったし、スタッフもたくさん付いてきている。何とか成功させなければならない。まさに正念場なんだよ。これを形にしたら長い間お世話になったセガを卒業しようと思っている。

じゃあ、小口さんが今後何かやるとしたら、やっぱり人に貢献できる何かってことになるんですかね。人にありがとうって思われるようなこととか。それがコンテンツなのかもしれないですけど。

小口 いや、そうだと思う。今、僕は岡谷市の産業大使とかやっている。で、年に2回ぐらい市の人がこっちに出て来てミーティングやったりとか・・・。あと、長野県の東京事務所の人とかもたまに来たりしている。岡谷の市長も4年ぐらい先輩なんだけど、よく知っててね。夏とかにたまに田舎に帰ると「おう」とか言って。それで、僕が「次、もう1回出んの?」とか言ったら「お前にはまだ渡せない」みたいな。ジジイになって東京に飽きたら、田舎に帰ってそういうことをするのもいいかもね。

若い頃、みんなの前で「絶対やらない」って豪語していたゴルフにハマる

政治の仕事とかですか。

小口 そうだけど金儲けじゃないよ。完全に貢献だよね。

それは分かります。でも、帰りそうにないじゃないですか。

小口 今のところはそう。刺激がないからね。僕は長野県の諏訪なんだけどエンタテインメントが少ないんだよね。だから、諏訪をもっとエンタテインメントのエリアにするという任とかいいなと思ってる。それだったら、ちょっとはやれるかなって。あそこってみんな素通りするというか、ちょっと降りて諏訪湖見て、温泉入っていくけど、でも泊まらないみたいな。諏訪湖の花火を見に来る人もだいたい日帰りしちゃう。

花火とかやってるんですね。

小口 そう。だけど、場所的にはすごくいいんで。自然とか健康とか、そういうゲームでは表現できない楽しさもいっぱいあるし。あと、ずっとデジタルでやって来たからアナログ。今後のエンタテインメントのキーワードはいくつかあるんだけど、僕の中でその中のひとつがアナログなの。

デジタルでもそういう表現は作っているけど、毎回決まったように動かない、決まったとおりじゃないみたいな。だから、僕が今一番ハマっているのは、若い頃、みんなの前で「絶対やらない」って豪語していたゴルフ。

あ~ゴルフ始めたんですか。

小口 結局、始めた。もう4年半ぐらいやってる。

じゃあ相当上手くなったんじゃないですか。

小口 まだスコアは100前後だよ。でも、かなりやってる。あれって絶対同じところに飛ばないじゃない。あのアナログ感がいいのよ。『みんなのGOLF』とかだと、同じようにやればだいたい同じところに飛ぶでしょ。

そりゃそうですよね。

小口 当然だけど実際のゴルフは、なかなかそうはいかないんだよ。そこには精神的なものもあるし、風とかもあるし。ああいうところがなんか楽しいかな。

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