黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 14

Column

ゲームクリエイター小口久雄氏が語るエンタメ論(上)原点は「自由にやって」「喜んでもらう」こと

ゲームクリエイター小口久雄氏が語るエンタメ論(上)原点は「自由にやって」「喜んでもらう」こと

微分積分とか、3行3列の解の公式とか開発をやってると意外と使うんだ(笑)

思う、思う。

小口 思うよね。僕もこんなのバカバカしい、これは社会に出る体裁のためだけにあるんだなとか思っていたんだよ。で、僕は理系だから微分積分とか、3行3列の解の公式とか、すごいやってたわけ。こんなもん人生で使うわけないだろとか思いながらね。でも、開発をやってると意外と使うんだ、アハハハハ。

ああ~そうなんだ。

小口 売上の分析とかする上でも微積の考え方ってやっぱり大事でさ。だから、世の中に役立たない学問はないと今は思ってるし、もっと勉強しとけばよかったなと。いまだに英会話とかやってるしね。今の仕事はグローバルだから英会話をやらないと務まらない。

いや~素晴らしいじゃないですか。

小口 でも、そのときはまだ勉学なんかいらないと思っていたから。とにかく遊びたかったんで、まず山手線の内側の大学に行こうって決めたんだよ。

ちなみに、当時はどこに住んでいたんですか?

小口 新井薬師。それで、高校時代の仲間たちと毎晩のように西武新宿線で歌舞伎町に遊びに行ってた。

「なんだこの歌舞伎町という夢の世界は」

新宿ではどんな遊びをされていたんですか。ゲームですか、それとも麻雀とかですか?

小口 なんでもやってたね。当時はゲームセンターがすごい流行っていて、もともとゲームとかゲーム場が好きだったので、「なんだこの歌舞伎町という夢の世界は」、「24時間遊べるじゃん!」とか思って。あと高田馬場のビッグボックスとかでもよく遊んでた。ビッグボックスの前の山水ビリヤードとか、あの辺にも毎日のようにいたなあ。

アハハハハ、なるほどね。

小口 めっちゃ楽しかった。で、予備校時代に1年間東京で生活して、絶対に山手線の内側の大学に行こうと思って。山手線の外って世田谷とか場所はいいけど遊ぶとこないでしょ。どうせ偏差値も下がっちゃったし、山手線の内側の大学って決めて。早稲田、慶応、理科大は無理。青学は受験科目に英語があって僕は英語できないからダメ。そうやって探していたら、ちょうどいいところに中大の理工学部が。あそこって水道橋じゃない。東京のど真ん中でしょ。

でも、あそこだってそんな簡単に入れないでしょう。

小口 うん、ところがその年の試験は自分にラッキーな問題だったの。物理はほぼ満点で、その日にああ受かったと思ったもん。

一番ハマッたのが、アーケードビンゴマシン

よく受かりましたね。

小口 それで大学はたまたま中大にひっかかったんだけど……あっ、そうだ! どうしても今回言っておきたいことがあったの。今まで遊んだゲーム。ビデオゲーム、アーケードゲーム全部含めて一番ハマったのが、その当時遊びまくったアーケードビンゴマシン(注6)。

注6:1970~80年代に一世を風靡したメダルゲーム。多少ルールは複雑だが戦略性、ギャンブル性ともに非常に高く、さらにピンボールのようにテクニックがモノを言う要素もあることから高い人気を博した。詳しいルールなどを知りたい方はビンゴゲームをテーマにしたこちらのサイト「Bingo Colors ビンゴピンボール」を参照してほしい。

それは東京に出てきたからハマったんですか?

小口 いや、田舎のデパートのメダルコーナーとかにもあったんだよ。複雑なゲームなんだけど、これがものすごく面白いの。で、浪人して東京に出てきたら、ビンゴゲームがくさるほどあるんだよ。当時はビンゴがものすごい人気でね。新宿にシグマ(注7)が運営している「ビンゴイン・サブナード」っていうビンゴだけのゲーセンがあったくらい。

注7:メダル機の輸入・開発や設置、メダルゲームセンターの運営などをしていた会社で、当時は「メダルゲームといえばシグマ」と言われた。

へえ~すごいですね。

小口 もともとはアメリカで作られて一時代を作った機械なのよ。アメリカのバリー(注8)とかが作ったのを誰かが日本に輸入して。多分、真鍋(勝紀)さん(シグマの創業者)に提案して、シグマが扱うようになったんだと思う。

それで、「ビンゴ面白い!」ってなって、本当にハマった。夕方ぐらいに大学終わったら新宿サブナードの「ビンゴイン・サブナード」に行って夜の12時まで。ものすごいハマるゲームなんで、オールナイトの日とそうじゃない日があるんだけど、終電近くになると常連がシグマの店員に「と・お・し! と・お・し!」ってコールしたりしてね。

注8:ピンボール機をはじめとするゲーム機器やギャンブル機などを開発していたアメリカの会社。特にピンボール機は人気で、日本にもさまざまなタイプが輸入された。

そんなことやるんだ(笑)。

小口 常連ってみんなメダルを店に預けてるじゃない。5万枚とか預けている人もいるんだけど、そういう人が「コイン3千円ずつ買うからさ、今日は通しでお願いしますよ」とか言って、店員も「分かりましたよ、もう~」みたいな。昔はお客さんとゲームセンターの一体感がすごいあったんだよね。僕もゲームセンターの店長と、ご飯を食べに行ったりとかしてたし。

いい時代だなあ。

小口 いい大人がいっぱいハマってたよね。もちろん、アミューズメントオンリーなんだよ? アミューズメントオンリーなのに、身上をつぶしたが大人がいっぱいいたの。

ええっ?

小口 ホントにいっぱいいたんだよ。お客さんも弁護士だとか医者だとか、会社社長とか、ホストとか、あらゆる人達がきてた。芸能界のちょっとイケてる人たちもハマっていて、沢田研二さんとかもやってたの。で、カッコつけたい僕としては「沢田研二もやっているんだからイケてるな」って。

小口さんらしいですね(笑)。


続きは第2回インタビュー
4月2日(月)公開

ゲームクリエイター小口久雄氏が語るエンタメ論(中)一番深い部分で感じる楽しさは「貢献」と「達成」

ゲームクリエイター小口久雄氏が語るエンタメ論(中)一番深い部分で感じる楽しさは「貢献」と「達成」

2018.04.02

著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

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