Interview

絶版になってはゾンビのようによみがえり…ついには映画化! 末井昭と「素敵なダイナマイトスキャンダル」の数奇な運命

絶版になってはゾンビのようによみがえり…ついには映画化! 末井昭と「素敵なダイナマイトスキャンダル」の数奇な運命

エロ本とはすなわち「永遠の予告編」。読者の興味を引き続けることで成立していたんです。

その淡々とした文章が逆に軽妙な印象を生んで、冨永監督言うところの”魔法のような文体”になったというわけですね。

この本ね、実は1週間で書いたんですよ。北宋社から「本を書いてくれ」と言われた時に、何を書くかという時に、だいたい今までに経験したいろいろなことを集めて書く、という漠然としたイメージはあったんですけど、いざ書くという時に、”ホテルにカンヅメ”っていうのをやってみたいなと。よく作家さんがホテルにこもって書くということを聞いていて、俺もカンヅメになれば書けるんじゃないかと考えて。
で、版元に『自分で宿泊費は払うから、どこかホテルを見つけてください』ってお願いしたら、お茶の水の『YMCA』という安いホテルを探してきてくれて。そこに1週間カンヅメになって…でも、会社を休むわけにはいかないから、昼間は出勤して、夕方になるとホテルへ戻ってというサイクルにして。書きあがるまで家に帰らない、というふうにすれば、いつか完成するだろうと思って自分を追い込んだら、1週間で書けちゃったんですよ。
でも、ちょっと一冊にするには足らなかったから、書いていた日記も入れたりして、水増ししたんです。だから、実際には一冊の分量として3分の2くらいしか書いていなくて。あとは他誌に書いた『荒木経惟論』を入れたりして、出してもらったんですけど…まぁ、これが全然売れなかったんですよね(笑)。

今、机上にある文庫版の帯に「幻の怪書、復刊!」とありますから(笑)。

でも、面白いのは、その2年後に当時、(明治大学教授でタレント活動もしていた)栗本慎一郎さんが読んでくれて、「すごく面白い!」と言ってくれたんですよ。栗本さんとは親しくしていて、栗本さんが当時、角川書店にいた見城(徹。現・幻冬舎社長)さんに「これ面白いよ、文庫にした方がいいよ」と言ってくれたようで、見城さんが角川文庫に入れてくれたんです。そのころから見城さんと付き合うようになったんですけど…それもまた全然売れなかったんですよねぇ(笑)。

当時の栗本さんの影響力は大きかったと思うんですけど…。

当時の文庫は、初版で3万5千部くらい刷っていたんですよ。そのころは出版が活況だったから、今からすれば、すごい部数なんですけど、結構な返本があったんじゃないかなぁ。それから10数年が経って、今度は筑摩書房の清水檀さんが文庫にしたいと言ってくれて。もう、角川との版権も切れていたから、いいですよって快諾したんですけど、やっぱり売れない(笑)。さらにそれから10年くらいして、『復刊ドットコム』から、もう1回復刊したいという動きになって。『復刊ドットコム』って、ある種の墓標みたいなところがあるじゃないですか。まぁ、これで『素敵なダイナマイトスキャンダル』も安らかに眠れるな、という気分だったんです、僕としては。ところが、それを出してから映画化が具体的になって、筑摩書房もそれに合わせて再版してくれて。まるでゾンビのような本だ、なんて言っているんですけどね。1回死んではよみがえる、ということを繰り返してきたので。

そうやって何度もよみがえってきたからこそ、冨永監督が手にされて、こうして映画にもなったわけですよね。

確かにそうですね。ただ、どの段階で冨永さんは手にしたんだろう?

手元の資料によると、2006年くらいとあります。

あぁ、それなら筑摩書房の文庫ですね。

それこそドラマティックで映画的なプロローグですよね。

まぁ、しぶとく数奇な運命をたどった本ですね、これは。

©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

確かに。また、この作品には数々の女性キャラクターが登場しますが、末井さんの女性観というのは、やはり、幼き日のお母さまとの別れに根ざしているところがあったりするのでしょうか?

菊地成孔さんが、”マザコン映画”と評しているんですよ。僕の母親が、いろいろと姿やカタチを変えて出てきている、と。で、峯田(和伸)くんが演じている近松さんという人にも、自分の親を重ねているところがある、と菊地さんは論じていて。自分ではそんなにマザコンだとは思っていないんですけど、ひょっとしたらそうなのかもしれないな、という感じもあります。映画で前田敦子さんが演じてくれた前の奧さんが僕の一歳上で、面倒をよく見てくれた人だったし…どの女性にも”お母さん”的なものを求めていたのかなって。

三浦透子さんの演じられた不倫相手の女性には、包み込むような母性を求めていたようにも見えました。

どうなんでしょうね…。エキセントリックな人でしたけど、謎めいたところに興味があったんです、最初は。すごくエロティックだったし。精神的に不安定なところがエロティックに映ったのかなぁ。そういう感じで魅せられて、どんどん深入りしていったら、相手がメンタルをやられてしまって…僕は罪悪感を持つようになったんです。自分のせいで彼女をそうさせてしまったんだって。
話を映画に戻すと、尾野さん、前田さん、三浦さんともに三人三様で、とても味わいがあるなぁと個人的には思いました。尾野さんは爆発しちゃうから死んだ時の容姿で止まっているけど、前田さんも三浦さんも、時間の経過とともに容姿も変わっていくじゃないですか。その過程が描かれているのが、それこそ映画的でいいなと思いましたね。

前田さん演じる奧さんが、破滅的な末井さんを最後の一線で踏みとどまって支えようとしているのがなんとも健気で…。

彼女はただ日々平穏に安心して暮らしていきたいという人だったんですけど、僕は逆なんです。どこかで平穏な日常をブッ壊したいという願望や衝動があったんですよね。収入が安定してきて家も買ったりするんだけど、それを壊したいという破壊衝動が首をもたげてくるっていうね(笑)。

©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

それを淡々と描いているのが”味”なのかな、と。また、雑誌のお仕事をされてから出会う方々…荒木さん然りですけど、一流の人を引き寄せるのがすごいですよね。

いやぁ、引き寄せるも何も、当時はみんな仕事がなかったからね(笑)。荒木さんや森山大道さんはもちろん、南伸坊さんにしても赤瀬川原平さんにしても、みんな貧乏で仕事がないから、単価の安い仕事でも引き受けてくれて。もっというと、こっちにも予算がなくて。だから、当時のメジャーな人には頼めなかったんです。そういう状況だし、どうせなら自分が魅力を感じる好きな人たちと仕事がしたいなと思って、その感性で選んでいったわけですけど、今となっては荒木さんも森山さんも”世界の”と冠がつくようになられて──と考えると、目利きだったのかな、なんて思ったりもしますけどね(笑)。
僕が痛快だったのは、東京都現代美術館が全館を使って『荒木経惟展』を開いた時ですね。それまで都条例に引っかかって怒られていた荒木さんの写真が、都の美術館いっぱいに飾られているのを見て、『時代は変わったなぁ』と感慨をおぼえたことを思い出します。

そう考えると、「写真時代」は時代の先を行きすぎていたのかもしれないですね。実際、廃刊の数年後に「ヘアヌードブーム→ヘア解禁」という流れがあったわけですし。

タイミング的には、あの時にエロ本をやめてよかったなと思っていて。世はヘアヌードで沸き返っていたけど、エロ本は衰退の一途でみじめでしたから。規制が緩やかになっちゃうと、エロ本って売れなくなるんですよね。なぜなら、エロ本というのは「次こそは見せますよ!」という予告を永遠に繰り返して、読者を引っ張ることで成り立っていたわけです。でも、その常套句が使えなくなった。エロ本が”永遠の予告編”ではなくなったタイミングで降りることができたというのは、今からすると妙にドラマティックに思えてくるんですよね。

映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』

3月17日(土)テアトル新宿、池袋シネマ・ロサほか全国公開

キャスト:
柄本 佑 前田敦子 三浦透子
峯田和伸 松重 豊 村上 淳 尾野真千子
中島 歩 落合モトキ 木嶋のりこ 瑞乃サリー 政岡泰志 菊地成孔 島本 慶 若葉竜也 嶋田久作
監督・脚本:冨永昌敬
原作:末井 昭「素敵なダイナマイトスキャンダル」(ちくま文庫刊)
音楽:菊地成孔 小田朋美
主題歌:尾野真千子と末井昭「山の音」(TABOO/Sony Music Artists Inc.)
配給・宣伝:東京テアトル
2018年/日本/138分/5.1ch/ビスタ/カラー/デジタル/R15+
©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

オフィシャルサイトhttp://dynamitemovie.jp/


【募集終了】抽選で1名様に末井昭さんの直筆サイン入りプレスシートをプレゼント!

応募期間

※募集期間は終了致しました。

3月17日(土)~3月25日(日)23:59

・応募期間中にフォローを取り消された場合は、応募が無効となります。
・複数のアカウントで応募された場合は、1アカウントのみ有効となります。
・Twitterアカウントを非公開にしている場合は、応募対象外となります。
・落選者へのご連絡はございませんのでご了承ください。
・応募は日本国内にお住まいの方に限らせていただきます。

※個人情報の取扱いについて
・お客様からいただいた個人情報は、当キャンペーン当選者様へのお問い合わせのために利用いたします。なお、個人情報を当該業務の委託に必要な委託先に提供する場合や関係法令により求められた場合を除き、お客様の事前の承諾なく第三者に提供することはありません。上記をご承諾くださる方のみご応募ください。


末井昭

1948(昭和23)年、岡山県生まれ。看板描き、イラストレーターなどを経て、1974(昭和49)年に白夜書房設立に参加。編集者として「ウィークエンドスーパー」「写真時代」「パチンコ必勝ガイド」などの雑誌を創刊。現在はフリーとして執筆活動や、バンド「ペーソス」のサックス奏者としてライブ活動を精力的に行っている。主な著書は「素敵なダイナマイトスキャンダル」、「自殺」(第30回講談社エッセイ賞受賞)、「末井昭のダイナマイト人生相談」、「結婚」など。3月1日に最新著書「生きる」を上梓した。


末井昭役 柄本佑さんインタビュー記事はこちら
末井昭のドラマティックな半生を淡々かつ飄々と演じた柄本佑。 『素敵なダイナマイトスキャンダル』に宿るエモさとは?

末井昭のドラマティックな半生を淡々かつ飄々と演じた柄本佑。 『素敵なダイナマイトスキャンダル』に宿るエモさとは?

2018.03.21

< 1 2