黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 13

Interview

ゲームディレクター須田剛一氏(下)起業の試練を越えたグラスホッパーが今描く未来

ゲームディレクター須田剛一氏(下)起業の試練を越えたグラスホッパーが今描く未来

死ぬまでこの仕事をやりたい

ひとつネガティブな質問をさせてください。グラスホッパーってある種、株式会社須田剛一じゃないですか。須田さんのクリエイティビティとかイマジネーションがベースにあった上でのグラスホッパーさんというか。あくまでもメインになるのは、真ん前に出てくるのは須田さんで、「須田剛一、ここにあり」みたいな。

須田 ああ……ですかねえ。

でも、このエッジの立ったクリエイティビティといいますか、そういうものを須田さんが永遠に作り続けるのは不可能なわけで。やっぱり須田さん一代で終わっちゃいけないと、僕なんかは思うわけですが、須田さん自身はこの先どうなると考えられていますか?

須田 どうですかね、僕自身は作り続けると思います。死ぬまでこの仕事をやりたいなと思ってるので、廃業・引退は考えてないですね。

もちろん、そうでしょうね。

須田 ただ、若手は育てたいですね。やっぱりそのメゾン(ファッション業界における会社や店のこと)じゃないですけども、ココ・シャネルは亡くなってるわけじゃないですか。ルイ・ヴィトンもディオールもそうですよね。

でも、残ってますよね。

須田 はい。しかも、ああいうメゾンって一番イキのいい、エッジの立ったとんでもない若手を採用するじゃないですか。で、メインのラインを全部任せたりとかして、そこでそのブランドが持ってた色とは違うものを作らせて。そうやってファッションって、どんどんどんどん蘇っていくじゃないですか。そういうメゾンのやり方ってすごく理想だなと思ってて。

つまり、プロレスで言えばカール・ゴッチ(注30)になればいいわけですね。

注30:「プロレスの神様」と呼ばれた往年の名レスラーでジャーマン・スープレックスの創始者として知られる。日本のプロレスとの関わりが深く、アントニオ猪木、藤原喜明、前田日明、高田延彦、船木誠勝、鈴木みのるら多くのレスラーがゴッチの指導を受けた。

須田 そうです、そうですね。前田日明を見つければ。

若き日の前田日明や高田延彦を見つけたりすれば、もしかしたら須田さんを目指されるかもしれないですよね。

須田 まさにそうです。それをやりたいと思ってます。押井(守)さん(注31)が押井塾ってやられてたじゃないですか。で、今『攻殻機動隊』をやってる神山(健治)さん(注32)とか、確かみんな押井塾出身なんですよね。それって、やっぱり押井さんの英才教育のたまものだと思うんですよ。多分、押井さんのアニメの作り方、作品の作り方みたいなものを押井塾で全部教え込んで。まさに黒川塾じゃないですけど、そういうものをやらないと自分に一番近い若手は育たないのかなって気がなんとなくしてるんですよね。

注31:『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』、『機動警察パトレイバー 2 the Movie』『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』などを生み出した映画監督・演出家。『紅い眼鏡』や『アヴァロン』など実写映画にも意欲的に取り組んでいる。
注32:『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズや『東のエデン』などを手がけたアニメーション監督。

『リリィ・ベルガモ』から『LET IT DIE』へ

『LET IT DIE』についてちょっとうかがいたいんですけど。森下(一喜)さんにお話をお聞きしたとき、アメリカもしくは海外にフォーカスして作ったっておっしゃっていたんですが、そこは須田さんも同じだったわけですか。

2016年 ロンドンコミコン ファンサイン会

須田 そうですね。それで、『リリィ・ベルガモ』から『LET IT DIE』に途中で変えたわけです。『リリィ・ベルガモ』はやっぱり国内に向けた企画だったですから。でも、ガンホー・グループに来た目的はそこじゃないだろっていうのもあって。で、企画のコアである非同期オンラインの要素が面白かったので、そこにフィーチャーして『LET IT DIE』に切り替えて、世界に向けてっていう。ちょうどガンホー自体がガンホー・アメリカを立ち上げたタイミングでもあったので、そこも含めて森下と話をしながらもっていった感じです。

タイトルが須田さんっぽいですよね。LET IT“DIE”、“BE”じゃないわけですから。そのあたりも須田さんのテイストを感じますよね。

須田 でも、『LET IT DIE』はみんなで作り上げましたね。森下も開発の中核にいましたし、大きなアイディアも含めたコンセプトはホント現場の若い子たちから出てきてるんで。

若いっていっても、30代後半なんですけど…。

今後はどういうものをお作りになりたいというか、すでに構想はあるんですか。

須田 今、Nintendo Switchで『Travis Strikes Again』(『TSA』)っていう『ノーモア☆ヒーローズ』シリーズの新作を作ってるんですけど、今回はインディーサイズで作ろうっていう挑戦でもあるんですよね。

そうなんですか。

須田 はい。去年のPAX West(注33)で発表したんですけど、任天堂のインディーズ系のイベントでの発表だったんです。要は若いインディーのクリエイターの作品群に交じってベテランの僕が……多分ベテランでいいと思うんですが、その若手ではない僕が『TSA』っていうタイトルを発表したと。

で、若い子たちに混じって、これからゲームを作っていくわけですよね。若い子たちが作っている新しいゲームの中に僕らのゲームを投下していくと。だからこそ、若い子たちに負けないように。もちろん、彼らからの刺激もいろいろあるでしょうが、ロートルのオッサンでもビンビンの新しいゲーム作るぞっていうのを、この場で見せつけたいなって思ってます。

それはこの一作で終わりではなくて、インディーズスタイルで完全新作のゲームも作りたいと思っています。『TSA』は続編ではないですけど、ある意味スピンオフだったりするので、そこはいろいろ考えてるというか画策してます。

注33:アメリカ、オーストラリアで行われている大規模なゲームイベントのひとつ。

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