Interview

アニメ『宝石の国』音楽世界の深淵を覗く。劇伴クリエイター・藤澤慶昌が語った“すごく朗らかなのに、どこか異常な歪さ”

アニメ『宝石の国』音楽世界の深淵を覗く。劇伴クリエイター・藤澤慶昌が語った“すごく朗らかなのに、どこか異常な歪さ”

今まで見たこともなければ感じたこともない世界で、どう手を付けていいかわからなかった

会話劇でもなく、物語の大半を静謐(せいひつ)な空間が描かれる本作。場の様子をそのまま見せるような描写も多い。さらに言えば彼らが住まう場所には生き物がいない。鳥も虫も鳴くことがない。なんだったら風の音しかしない世界の表現。しかし絶対に音は存在している。それをどう補完するか。

藤澤「印象としての景色音というのも必要になってきたんですよね。途中で。演出もあって。そういうところも意識的に織り交ぜて。環境音的な、曲とは言えないけど音もあったりもして。そこら辺の話も、監督と話していて出ましたね。“こういう音があった方がいいんじゃないか”って。多分、僕から提案させていただいたんですけど。……でも意外と全体的に苦戦したような気がします。どれが具体的に、というのは実際にはなかったんですけど、今まで見たこともなければ感じたこともない世界だったんですよね、『宝石の国』自体が。だから正直なところ、どう手を付けていいかわからなかったんです」

藤澤「たださっきもお話しした、退廃感であったり、隙間だったり、白黒の感じ、というのからとりあえず自分が思うような曲を作ってみよう、とやり始めて、そこからの再構築だったんです。だから再構築の時点では少しずつモヤのようなものも取れてきていたので、すっと制作は進んでいったと思います。毎回悩んではいますが、この作品でも悩んではいます。曲がどうこう、というよりも世界観との整合性をどう取るか、ということが悩ましかったので、音楽全体が難しかったと思いますね」

音数は少ないが逆に音が担う役割は大きい本作。結果として音で物語を整え、必要最小限で最大限の効果を引き出すこととなった。音色を選ぶのもまた音が伝える物語の“情報”となっていった。

藤澤「シンシャはもう、僕がずっと“二胡だ!”と思っていたので、使いました。再構築のときに、ちょっとアンビエントな、もっと空間的なものに、ということで何を使おうか、というやりとりは、音楽全体としてはありましたけど、やっぱり宝石っぽさを考えていくと、ピアノのガーンと響く旋律だったり、ストリングスのキラキラとした部分や、月人の気持ちの悪さとして重たいところで弦がうにゃあ、と歪んで響くところは作りながら決めていきました」

シンシャ

改めて、1本の映画のように全編を通して観ていただけたら

今回、『宝石の国』の劇伴を担当したことで改めて「劇伴仕事の面白さ」を感じたという藤澤。それはセミフィルムスコアリングという手法。最初に完成させたオーダーに従って作ったメニューという楽曲群と、それを場面に合せてフィルムスコアリングで再構築していく作業というふたつとで進んだ、この手法だった。

藤澤「僕は元々絵に充てる方が好きなので、何も絵が出来ていないところに音楽を作って渡すケースでは僕にとってのうれしいサプライズがたくさんあるんですが、確実に絵を観て音楽を作る、中身を観ながら作ることというのがすごく楽しかったです。いわゆるテレビアニメではなかなかそういった手法で作ることは出来ないので、いい経験だったと思います。面白い経験でした。これによって出来ることと、メニューとして作っていくことにいろいろな可能性があるんじゃないかな、と思った次第です」

最後にこの『宝石の国』を改めてパッケージでも楽しむ読者へ、作品と劇伴の楽しみ方と劇中の音楽の聴きどころを訊ねた。

藤澤「音楽的な面で言うと、通して観てみると曲のモチーフの意味が見えて来るかもしれないです。もうちょっと、山とか谷とか。もちろん音響チームの音の当て方も含めてですけど、アニメを毎週追っていたときよりもわかる気がします。全部通して観るのは長いかもしれないですが、映画を観る感じに近いんじゃないかと思います。各話完結ではなくうまく次へ、次へと繋がっていくようになっているので、線になっていくのがもっと具体的に感じられる。あとはオープニングのオーケストラver.ですね。通して観ると、十二話のエンディングの理由が伝わると思いますし、一本の映画として観ていただけるといいなと思います」

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© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会

関連リンク

『宝石の国』オフィシャルサイト
http://land-of-the-lustrous.com/

原作コミック

宝石の国  (1ー8巻)
作:市川春子 出版社:講談社

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