Interview

「うれしいし、たのしいし、大好きかもしれない。」入江悠監督インタビュー

「うれしいし、たのしいし、大好きかもしれない。」入江悠監督インタビュー

DREAMS COME TRUEの楽曲を自由に小説にすることをテーマに募集した「Otobon ソングノベルズ大賞~音楽を感じる小説~」。応募作品の審査選考員のひとりでもある映画監督・入江悠が、電子小説プロジェクトにインスパイアされたショート・ムービーを完成させた。青春ストーリー「うれしいし、たのしいし、大好きかもしれない。」への想いを語る。


平祐奈さんが、踊る女子高生役で起用となりました。

もちろん踊りが上手にできるというのがオーディション時の、女の子を選ぶ最優先順位だったんですけど。

色んな方が来てくれましたが、幼すぎても、完成された大人すぎてもイメージとは合わなくて。夢に向かっていく彼女が、これからどんな道を歩んでいくんだろうなと想像してほしかった。

そういう意味でまだ少しだけ幼さが残る、平祐奈さんだったんです。

スタートのポースを決めている時と、4分半踊り終えた時の彼女の表情は違っていましたね。あの時間の中だけで成長していくように映る彼女にドキっとしました。

そうですね。そこがベースとなっている小説と違うところなんです。

映像は時間に束縛があります。小説は出会いから経過、紆余曲折を多くの文字で描写しますが、映像は表現方法が違います。

特に今回は短篇だったので、どこかの日常を切り取ったシーンで、そういう変化が見せられる子に演じてもらいたかったんです。平さんは絶妙な時期でした。

1年、2年したらもっと美人な大人の女優さんになっている気がするので、今回はすごくいいタイミングだったと思っています。

全編通して撮影する”一連”も印象的でした。

最近ミュージックビデオを何本か制作してみて、なんかこう、ダンスをずっと撮りたいなと思っていたんですね。それもカット割りでごまかさない一連で。

でも作品としてなかなかそのめぐり合わせがなかった中、今回の電子小説プロジェクトに関わったことで、見えてきたんです。学校を舞台に、なんかこう、上手いのか下手なのかわからないくらいの、これって彼女の自己流ダンスなのか? って思わせたかったんです。

編集でカッコ良くし過ぎると完成されたムービーになってしまうので、作品自体にも成長を見せたかったというか……僕自身が興味があったんです。

平さんはどのくらい踊れるんだろう? 3分なのか4分なのか? 

先ほどのご指摘どおり、踊りきった時にどういう顔をするんだろう? って。 監督としての僕の期待に彼女は見事に応えてくれました。

それにしても引き寄せる力を感じる躍動感あふれるダンスでした。

前日のリハーサルを入れたら彼女はもう何十回と踊っているんですけど。膝がガクガクすることもなく、全然ゼエゼエしないんですよね(笑)。

もちろんカメラがまわっているから演技しているという意識の中でやっているんでしょうけど、あれは20代の女優さんだったら絶対に無理ですよ。

若さ、ですね(笑)。でも入江さんも映画監督としてはお若いですよね?

僕は36歳ですから、小説『大好き!』のような青春描写はできません(笑)。

そう言えば。ショート・ムービーのタイトルが曲名でも、インスパイア小説名でもなく、「うれしいし、たのしいし、大好きかもしれない。」になっていたのが面白かったです。

ドリカムの「うれしい!たのしい!大好き!」って、すっごいド直球じゃないですか。これ以上の直球って多分ないぐらいのパワーですから。

それって吉田さんと中村さんのあのパワーというか、笑顔とか、歌っている姿とすごい直結するんですよね。だからオシャレなふわっとしたタイトルをつけることもできるんですけど、せっかくのインスパイアード・バイなので、まずは“共通”を意識しました。

浦上さんが演じた少年にしたらすごい貴重な撮影をしたっていう時間なわけじゃないですか。その行為が後からじわじわとかみしめてくるんでしょうけど、それがこの「うれしいし、たのしいし、大好きかもしれない。」なのかなと。

でも自分のオリジナルだったらこのタイトルは付けられないと思うんですよ。伊藤さんの小説『大好き!』もそうですが、僕にはこんなにストレートに命名できないですね。

でも見事な青春ストーリーでした。胸がキュンとなりました。

やっぱり、あの平さんと浦上さんって多分これからもっとすごい映画とかドラマで活躍していくと思うんですよね。そのふたりの今の一瞬が切り取れたという意味でも貴重なムービーになったと思います。

でも、10代の若い役者さんと仕事ができた僕が一番貴重な体験をしたのかもしれませんね(笑)。

写真/山本哲也 インタビュー・文/安川達也(編集部)

入江悠(いりえ・ゆう)

yuirie_prof

映画監督。1979年生まれ。自主制作による『SR サイタマノラッパー』が国内外で評価され、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター・コンペティション部門グランプリ、第50回映画監督協会新人賞など多数受賞。『日々ロック』(’14年/野村周平、二階堂ふみほか)、『ジョーカー・ゲーム』(’15年/亀梨和也、深田恭子ほか)が連続ヒット。待機作は『太陽』(’16年4月23日公開予定/神木隆之介、門脇麦主演)。