黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 9

Interview

ガンホー代表・森下一喜氏(下)弟の影響とオンラインゲーム。「チャレンジをできなくなるほうが怖い」

ガンホー代表・森下一喜氏(下)弟の影響とオンラインゲーム。「チャレンジをできなくなるほうが怖い」

僕はもう一度まっさらな状態で会社を作ろうと思っていたんですけどね

その頃に孫泰蔵さん(注11)とお会いになって、休眠会社だったオンセール(ガンホーの前身)を引き継いで再度起業した形になるわけですか?

森下 僕はもう一度まっさらな状態で会社を作ろうと思ってたんですけどね。それで、当時伝手を頼って大手のゲームメーカーを紹介してもらって、出資してほしいみたいな話をしていたんです。だから、僕的にはゼロからスタートするつもりだったんですけど、たまたまそのとき孫泰蔵さんと話す機会があって、オンセールを清算しなくちゃいけないと。それで、いろいろ処理を手伝ったりしたんですけど、結果的にはそれが一つの縁となり、その会社を引き継いで創業することになりました。最初は引き継ぎたくなかったんですけどね。

注11:ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社の取締役などを務める。ソフトバンクグループ創始者の孫正義氏は実兄。

断っちゃったんですか!?

森下 当初はそう思ったんですよ。でも、そのときのソフトバンクは「Yahoo!BB」、いわゆるADSL事業を始めていて、インフラは作ったけど、それに乗せるコンテンツがまだ無いと。で、「それ(オンラインゲーム)ってやっぱりブロードバンドのほうがいいんでしょ? だったらソフトバンクに協力してもらった方がいいんじゃない?」みたいな話になったんです。

確かに、インフラが整わなければオンラインゲームなんて成立しないですからね。ISDNでテレホーダイ(注12)の時間になったらやるとかじゃなくてね。

注12:午後11時から翌朝8時までの電話料金が一定になるNTTのサービス。当時は従量制が一般的だったので、多くのオンラインゲームのユーザーがこのサービスを利用していた。

なるほど。

森下 僕がいわゆるネットワークゲームのSDK受託の仕事をやっていたとき、ゲームメーカーのオンラインっていうものに対する否定感を感じていたんですね。積極的なのってセガぐらいだったんですよ。

『あつまれ!ぐるぐる温泉』(注13)とか、いろいろチャレンジングなことやってましたよね。

森下 ありましたよね。でも、セガ以外はなかなかどこもリスクを取って参入しようとしなかったっていうか、理解を得るのが難しかったというのがあったんです。新しいイノベーションを起こしていくには、やっぱりインフラは不可欠だよなあっていうのもあって、それで「じゃあソフトバンクでやってみようか」って思い始めたんですよ。そうしたら、「この会社(オンセール)でやってくれないか」って言うわけです。せっかく清算した会社なのに。

注13:セガのドリームキャスト向けオンラインテーブルゲーム。麻雀、将棋、トランプなどのオンライン対戦を楽しめるというもので、当時はまだ珍しかったアバター作成機能なども搭載していた。

ゼロスタートではなくマイナススタートだった

ああ~。

森下 「やだーっ!」て言って断りました(笑)。もう3回くらい断りましたね。ただ、向こうもいろいろ会社を清算して清算疲れみたいなのがあったんでしょうね。会社を潰すっていうのは本当に痛いみたいな話をされていて、なんとなく共感してしまったんです。だから、負債を持ちながらスタートしたんです。ゼロスタートじゃなくてマイナススタートだったんですね。

すごいことを毎回やってますね。

森下 ねえ、バカですよねえ。もう絶対やらない、死んでもやらない。もう二度とそういう愚かなことはしないです。でもね、今あるいろんなことはすべて必然性があったんじゃないかなとも思っているんですよね。

平成17年3月9日 ジャスダック上場記念

それは感じますよね。

森下 そのときに判断したことはベストチョイスとは言えなかったかもしれないけど、別のチョイスをしていたら、いろんなことがすべて崩れて、全然うまくいかなったかもしれない。だから、そうじゃなかったら、もっとよかったのになんて考え方をするんじゃなくて、うまくいったこともうまくいかなかったことも、今あることはすべて必然だったんだと思ってます。

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