90’s ホイチョイ・ムービーで時代の先を行くプレイボーイを演じた別所哲也。当時の撮影秘話や馬場康夫監督への想いを語ってもらった。
次の『メッセンジャー』を見ると、今度は商社マンの役でしたね。“波数”の若手広告マンが9年後に大きな物産会社に勤務という見方ができるというか……“波数”では学生たちに半分足が入っているような別所さんが、『メッセンジャー』だと完全に大人の社会に身を置いている。時間の経過を、馬場監督が時間の経過を設定で演出してみせたのかなと思うんですが。
なるほど。だとしたら、嬉しいですね。僕はすごく馬場監督に可愛がっていただいて、その後もJ-WAVE の番組もオファーをされてやらせてもらったり、馬場さん自身がやられているラジオ番組に出演させてもらったりとか、いろいろと声をかけていただきました。
だからこの岡野っていう役をやらせてもらった時もそうだったんですが、どこかやっぱり馬場さんの中にある映画の中に託した自分の立ち位置みたいなものが感じられるんですよね。勝手な解釈ですけど、僕に託してくれているようなところもあったりして、だから名前こそ違え、僕自身は全然そうじゃないけれどキャラ的にはいわゆるバブルを背負った3高のキャラクターをやらせてもらうことが多かったんじゃないでしょうか。
ということは、馬場さんは別所さんだけに対しては実は意外と細かく演技指示を出していたりとか。
そうでもなかったんですが、僕に対しては全体の作品が持っている想いやメッセージなど、そういうことはけっこう熱く語ってくれてましたね。例えば『メッセンジャー』の時は、自転車便がNY でカッコよく出始めた頃で、日本ではまだまだ上陸していなかった。
でも、僕もNY 行った時に自転車便を見かけて、オシャレでかっこいいなと思っていたんです。そういう話を馬場さんとして盛り上がりましたね。感度が似ていると思ってくれていたからか、ああいうキャラクターを振ってくれたというか。
そういえば『メッセンジャー』にはNY のシーンがありますよね。本当にマンハッタン撮影だったんですか?
はい、NYまでそのシーンのためだけに行きました。スケジュールがなくて、2泊3日か1泊3日だった気もします。セットでいいんじゃないですか? って聞いたんですが、いやいや、NY なんだよということで行ったんです。ホテルの外側から照明を当てていますし、すごくお金がかかっていますよ。
別所さんの役者のキャリアの中で、一連のホイチョイ作品はどう位置付けていらっしゃいますか?
やはり“波数”でしょうね。僕の中ではアメリカのハリウッド映画でデビューして、日本に戻ってきていろんなことをやり始めた、まさにスタート地点の時期にあった作品ですね。特に長期ロケで、織田くんとか共演者のみなさんと本当に長い時間、合宿のような形で、映画を撮るっていうのは初めての体験だったので忘れようにも忘れられない1本です。
個人的には、“波数”パート2をやってみたいと思っています。出演した全員が健在ですし、僕が想像を膨らませて、面白そうだと思っているだけですが(笑)。みんなその後、それぞれの人生があって、あの後どうなったかっていうのがあって、多分次の世代も出てきて。子ども世代もいるでしょうし、いろんなことがある紆余曲折のキャラクターが揃ったら映画として面白いですよね。

映画の中でも間の9年間は空白ですしね。何があったかは想像の中ですけど、面白いそうですね。もしやるとしたら、別所さん演じた広告マンは出世していそうですか?
局長くらいに昇進して、偉そうなこと言ってるかもしれませんね(笑)。あるいは窓際だったりして。そういう想像をするだけでも映画って面白い。このインターネットの時代になって、ミニFM 局がどうなっていったのとかも興味ありますよね。
実際、“波数”の後にいっぱいコミュニティーFM やミニFM 局が全国的に生まれた。映画はエンターテイメントであると同時に社会を切り取るっていうか、ミニFM 局が出てくる時代の兆しを先取りしいたんですよね。『メッセンジャー』での自転車便もその後にあっという間に広がり、今ではスタンダードになっている。その兆しをうまくカッコよくトレンディーに見せたのがホイチョイ映画の真髄だったと思います。
今でも当時のホイチョイ映画が愛されている理由は、青春共有スイッチというか解けない魔法みたいなものだったりする気がします。
そうですね。当時にしてもこれって、あ、あるよねとか、ちょっとほろ苦い、いわゆる恋愛ものだったりもするし、青春群像劇だったりもするんですけど、そこにちょっと時代をぎゅっと真空パックする。ちょっと先の時代まで読み解きながら入れているところがカッコいいのかなって。
もし、今ホイチョイからオファーがあったとして、他の出演者の方たちも続編だったら出るということでしたら、別所さんも出演されますか?
それはもちろん! 『バブルへGO!』を馬場さんが作っている時も、楽屋に別所君の名前を貼りたいから名前だけ貸してって言われて、いいですよって言ったくらいですので。
馬場ワールドっていうのは、時代と共にあるというか、その時代の空気感とか、チャーミングさとかオシャレ感とか、それから男女がこう恋する気持ちとかをうまくすくい上げているんですよね。そうでありながら、本質はデートムービー。映画を観終わった後に気持ちよくご飯を食べに行けるとか、映画のことを気持ちよく語りながら、一緒に観た人との距離が縮まる。映画の魔法ってそういうところにもあるんですよね。
もし続編とかそういう話があるなら、本当に出たいです。馬場さんからの連絡を待ってます(笑)。
インタビュー / 安川達也 文 / 油納将志 撮影 / 島田香
DVD『メッセンジャー』

フジテレビ/小学館/ポニーキャニオン
3,800円+税
©1999 フジテレビ/小学館
別所哲也
静岡県出身。’87年より舞台俳優として活躍。’90年に日米合作映画『クライシス2050』で映画デビューを果たした。’91年公開の『波の数だけ抱きしめて』と『新・同棲時代』で日本アカデミー賞・新人俳優賞を授賞する。日本におけるショートフィルムの紹介にも力を入れており、『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア』の代表も務めている。