Review

『波の数だけ抱きしめて』

『波の数だけ抱きしめて』

1991年8月劇場公開作品
発売元:フジテレビ/小学館/ポニーキャニオン
販売元:ポニーキャニオン
DVD:3,800円+税/Blu-ray(写真):4700円+税

ホイチョイ・ムービー3部作完結編!!!
舞台は音楽と潮風に揺れる’82年湘南。

STORY

1991年。東京の教会で行なわれた真理子(中山美穂)の結婚式に旧友の小杉(織田裕二)、芦沢(阪田マサノブ)、裕子(松下由樹)、吉岡(別所哲也)も出席していた。幸せな時間。式の帰り小杉と芦沢は、真理子と遊んだ9年前の湘南の日々が懐かしくなる。「真理子はあのラジオ、聴いてたのかな?」(小杉)。横横経由でクルマを飛ばし134号線を茅ヶ崎へ向かう……。1982年夏。西海岸文化全盛の頃、学生時代最後の想い出に本格的なFM 局の設立をめざす若者たち。そんな彼らのひと夏の夢と恋を、湘南の潮風と涙を舞台に心地良いユーミン・サウンドを乗せて描いた、ちょっぴり懐かしくも斬新なホイチョイ青春映画。劇中のミニFM 局『Kiwi』は、実在の『FM Banana』のコンセプトをベースにしたもの。TOTO やJ.D.サウザーなど劇中で効果的に使用された洋楽AOR コンピレーションしたサウンドトラックも発売され大ヒットした。

監督 馬場康夫
原作 ホイチョイ・プロダクションズ
脚本 一色伸幸
製作 三ツ井康、相賀昌宏
音楽 松任谷由実

エグゼクティブプロデューサー 村上光一、堀口壽一
プロデューサー 河井真也、茂庭喜徳
挿入歌 松任谷由実

出演 中山美穂、織田裕二、
松下由樹、別所哲也、
阪田マサノブ、勝村政信 ほか

「スキー」「スキューバ」…注目のホイチョイ3部作のラストは「FM」。
「やられちゃうぞ…ほかの誰かに」のリフレインが叫んでる!?
爽やかなAOR が包むミポリン&カンチによる“湘南ラヴ・ストーリー”。

波の数だけ抱きしめて。何とも言えない胸キュンな響きだ。24年前のサウダージな記憶が、引いては押し寄せる……。

『私をスキーに連れてって』で「スキー」。『彼女が水着にきがえたら』では「スキューバダイビング」。80年代バブルレジャー流行の一端を担ったホイチョイ・プロダクションズ。のちの呼称“ホイチョイ青春3部作”のラストが『波の数だけ抱きしめて』だった。キーワードは意外にも「ミニFM」。そう、公開こそ’91年だが、物語はそこからさらに9年前の回想だった。

 ’82年夏。学生最後の夏の想い出に「ミニFM」局設立に奮闘する若者たち。そんなひと夏の夢、そして恋を、湘南の風と波を舞台に、グッドミュージックに乗せて描くかなり青春な物語。

設定はアメリカの西海岸文化が押し寄せていた時代。劇中では、ラジオフレンドリーな大人向けのロック、いわゆる「AOR」がふんだんに使われた。制作陣が、あの頃の洋楽の記憶をフィルムに記録したいがためにこの舞台を用意したのではないかと思ってしまうほど音楽は存在感を放っていた。

実はこの映画の主題歌は“私スキ”以来のユーミンだったのだが、TOTOの「ロザーナ」が主題歌だと思っている人もいたほどだ。

 ’91年秋。僕はこの映画は彼女と観に行った。お互い横浜に住んでいたけれど、わざわざ平塚の映画館まで車を走らせた。ほら、バックグラウンドが大事だからね。スクリーンの中のミポリンもカンチ(織田裕二の当時巷の通称。笑)も夏色だったが、晩夏の僕らも真っ黒に日焼けしていた。

あの頃“世界中の誰よりきっと”小麦色&真っ白い歯が眩しかったミポリンが、自分に告白してくれないカンチを思いながら、「やられちゃうぞ……ほかの誰かに」の台詞を発した時は衝撃だった。だけど、邦画史に刻まれるクライマックスのカンチの告白はもっとスゴかったなぁ。

映画の帰り道。しっかり準備していた“波数”サントラを、マイケル・J・フォックスよろしくのかっこインテグラのカーラジカセで聴きながら、「カンチもさぁ、最後にリカにあれぐらいのことが言えたらよかったのにね?」と、東京だか、湘南だかよくわからないラヴ・ストーリーの話で盛りあがった。

 今でも国道134号線を車で走っていたり、FMからネッド・ドヒニーやラリー・リーの甘い歌声が聴こえてくると、あの頃つき合っていた彼女のサイドシートの横顔を想い出す。今は何処にいるのかなぁ。そして俺の自慢だった日に焼けたあの腹筋も何処にいったのかなぁ。二度と戻らない……。

文 / 安川達也