Interview

「リトル・プリンス 星の王子様とわたし」マーク・オズボーン監督インタビュー

「リトル・プリンス 星の王子様とわたし」マーク・オズボーン監督インタビュー

アントワーヌ・ド・サン・テグジュペリの『星の王子様』の発行は第二次世界大戦中の1943年です。それから70余年の時を経て、21世紀の現代とリンクした物語としてアニメーション化した経緯を教えてください。

「『星の王子様』は、世界中の人々が心に刻んできた物語です。アニメーション化の噂が何度もありましたし、それを希望する読者も多かった。実は発行直後には、オーソン・ウェルズが原作権を獲得し、ディズニーと組んで映画化しようとしていました。

また、1974年にスタンリー・ドーネンがミュージカル映画にしていますが、原作に忠実ではありませんでした。次に自分がその企画に名を挙げるなら、世界中の熱い期待に応えなくてはいけない。正直、怖かったです。でも私は、この本は現在にこそうってつけだと思いました。現代のみんなが求めている内容を描いているからです」

今作には、原作に出てくる飛行士が年を取って、隣の家に住む少女に王子様との出会いと別れについて語っていく、というアレンジが加わっています。原作の「その後」という発想に至ったのはなぜですか? 

当初から私の中には、『星の王子様』に出てくる飛行士が年を取り、誰かに王子様のことを語りたいのだけれど、語る相手がいないという物語がありました。原作の世界観を核にしながら、『星の王子様』を読むことで人生がどう変わるか、その経験を描きたかったのです。

あの本を読んだ少女の変化を、私は観客に見せたいと思いました。もしかするとアニメーションを通して、はじめて『星の王子様』を手に取ってくれる人が現れるかもしれません。そういう連鎖反応を、私は望んでいます」

©2015 LPPTV – LITTLE PRINCESS – ON ENT – ORANGE STUDIO – M6 FILMS – LUCKY RED

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現代のパートはカラーの鮮やかなCGアニメーション、回想パートはクラフト感あふれるパペットによるストップモーションアニメーションですね。

「原作にあたる飛行士の回想パートは、とてもデリケートでピュアな世界観。詩的で儚い感じを壊すことなく表現したいと思いました。そこで、和紙という素材がふさわしいと思いついたのです。ストップモーションアニメーションによる手作りの感覚も最適だと思いました。原作が持つ、本の精神を守るためです。

 一方、現代パートで重要視したのはリアリティであり、その表現方法としては最新技術によるCGがぴったりでした。ふたつの世界観を観客に提示することで、『ストップモーションアニメーションの魅力ってこういうものなんだよ』『CGでは今、こんなことまでできるんだよ』とアニメーションの豊かさを伝えられるとも思いました。」

©2015 LPPTV – LITTLE PRINCESS – ON ENT – ORANGE STUDIO – M6 FILMS – LUCKY RED

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ふたつをなじませるのに苦労された点や、工夫されたことを教えてください。

「スタッフは当初、『なんでわざわざ、ふたつの手法を融合させなくちゃいけないんだ』とぎゃあぎゃあ言いましたよ(笑)。技術的に大変だったのは、回想パートと現代パートを縫い目のない状態、つまり、シームレスにつなげることでした。そこでキーとなったのが『紙』でした。みんな毎日、紙を触って暮らしていますよね。その感触や質感をよく知っている。

映画は主人公の少女が、隣の飛行士の家から飛んできた物語の断片を描いた紙を拾って、触って、読むことからはじまります。紙を通して、ファンタジーの世界に突入していくんです。だから、パペットもすべて紙で作られています。回想パートに出てくる世界はパペットに限らず、背景も小道具もすべて紙で作られています」

オーソン・ウェルズがディズニーと組んで『星の王子様』映画化を計画していたということですが、監督自身は、ディズニーとは違うアニメーションの世界観や表現方法を意識されたんでしょうか?

「ディズニーとの違いを意識することより、目の前の素材をどう語るのか、それを技術的にどう表現するのか、ということに集中しています。だから、自分の作風とディズニーの作風の違いは、自分ではうまく説明できないですね。その違いは観客が感じるものでしょう。

告白しますと、自分がアニメーションを作っているうえでとても強く意識しているのはスタジオジブリであり、宮崎駿さんです。宮崎さんは私に多くのインスピレーションを与えてくれる人です」

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日本人クリエイターの四角英孝さんがキャラクター監修になっていますが、どうして起用されたんでしょうか?

「彼は長い間、ディズニースタジオでいろんな経験をし、訓練を受け、最新の技術を知っています。また、ストーリーをCGで表現するアーティスティックな才能を持っています。私はストーリーテリングの才能は持っていますが、CG技術に関してはまったく知らないんです。そこでヒデ(四角)にお願いし、彼もきっちり応えてくれました」

キャラクター・デザインはピーター・デ・セヴさんですが、四角さんの仕事とは、どういう違いがあるのでしょうか?

「ピーターがCG部分のオリジナルキャラクターを、アレクサンダーがストップ・モーションのキャラクターを作っています。ピーターのスケッチやドローイングはまるで生きているかのよう。その個性を失うことなく立体化するのが、ヒデ(四角)の仕事です」

©2015 LPPTV – LITTLE PRINCESS – ON ENT – ORANGE STUDIO – M6 FILMS – LUCKY RED

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主人公の少女が暮らす街の造形もとてもグラフィックで、視覚的な面白さを感じました。少女の管理された生活ぶりは、チャーリー・チャップリンの『モダン・タイムズ』やジャック・タチの『プレイ・タイム』のようでもあります。具体的に参考にした都市や文献、映画などはありますでしょうか?

「ジャック・タチに関しては『ぼくの伯父さん』に出てくる、オートマチックな部屋の内部をかなり参考にしました。あとはスタンリー・キューブリックですね。『2001年宇宙の旅』の宇宙ステーションをイメージしながら、何もない無機質な感じや、室内の光、様式化された空間設計を考えました」

娘の将来を案じるがゆえに、娘を細かく管理する主人公の少女のお母さんは、星の王子様が地球にたどり着くまでに出会う、一つの価値観にとらわれたつまらない大人たちと同じ人種と言えます。しかしこの映画で少女は、お母さんの価値観を変えることができる。監督自身の大変な受験時代や、個人的な体験が込められていたりしますか? 

「私の両親は楽しい人だったから、この映画とはちょっと違いますね。私の子ども時代は親も子ももっとのんびりしていたし、リラックスしていたと思います。今の子どもたちは勉強に、お稽古ごとにとオーバースケジュールで、息つく暇がない印象が強い。

少女のお母さんのように、『こうしなきゃ』って約束事にとらわれている親も少なくないでしょう。『次のステージは?』『どこに向かうの?』とつねに親が子どもを追い立てていて、子どもたちが自分自身でなにかを見つける機会すら失われている。それに対して、思うところを描きました」

©2015 LPPTV – LITTLE PRINCESS – ON ENT – ORANGE STUDIO – M6 FILMS – LUCKY RED

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ある意味、とっても普通の女の子が主人公というのが、監督らしさと言えますね。まだ明かされていない部分が多いのですが、もしかすると星の王子様のその後も描かれることはありますか?

「たしかに、この作品にはまだまだ秘密があるのですが、それは今、ここでは語れません(笑)。主人公はとっても普通の女の子ですが、この映画の中で成長し、少女から脱します。その過程と変化をぜひ、見てもらえればと思います」

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『リトルプリンス 星の王子さまと私』

11月21日(土) 全国ロードショー

『リトルプリンス 星の王子さまと私.』

©2015 LPPTV – LITTLE PRINCESS – ON ENT – ORANGE STUDIO – M6 FILMS – LUCKY RED

この冬一番の、感動ファンタジー超大作
それは、あの「星の王子さま」のお話と、誰も知らないその先の物語――。

1943年に出版されて以来1億4500万部以上を売り上げ、時を超えて、世界中で愛され続けているサン=テグジュペリの「星の王子さま」。 砂漠に不時着した飛行士と小さな王子との出会いと別れをつづった、“宝石のような物語”と言われる永遠の名作です。

その出版から72年、サン=テグジュペリ・エステート(ルビ:権利管理者)が初めて認可した「星の王子さま」のその後の物語が誕生しました。 描かれるのは「星の王子さま」のお話と、まだ誰も知らないその先の物語――。

主人公は9歳の女の子。 勉強ばかりで友だちがいない少女の日常は、引っ越し先の隣に住む、元飛行士のおじいさんに星の王子さまの話を聞くことから変わり始めます。 「大切なものは、目に見えない」――その本当の意味を知るために、あなたも、女の子と一緒に、王子さまに会いに行く冒険と感動の旅に出ませんか? 原作の母国フランスで公開されるや、初登場堂々1位の大ヒット。 一生に一冊の本があるように、一生に一本の映画がある――。 これは、そんな“特別”な映画です。

[日本語吹替版 キャスト]
鈴木梨央〈女の子〉
瀬戸朝香〈お母さん〉
伊勢谷友介〈キツネ〉
滝川クリステル〈バラ〉
竹野内 豊〈ヘビ〉
池田優斗〈星の王子〉
ビビる大木〈うぬぼれ男〉
津川雅彦〈飛行士〉

[日本語吹替版 主題歌]
松任谷由実
「気づかず過ぎた初恋」
作詞・作曲/松任谷由実 編曲/松任谷正隆

配給:ワーナー・ブラザース

オフィシャルサイト