
シドがオリジナルアルバムとしては3年6ヵ月ぶりとなるファン待望のニューアルバム『NOMAD』を発売した。このアルバムリリースに合わせて、本サイトでは昨日から[シド特集]がスタート。本日、ソロインタビューの2人目として登場してくれるのは、ドラムのゆうや。『NOMAD』でこれまでのシドにはまったくなかった衝撃的なニューソング「低温」を作った話を中心に、本作における“挑戦”を様々な角度から解説してもらった。
取材・文 / 東條祥恵 撮影 / 今元秀明
個人個人がシドに対する想いとか、俯瞰でシドを見ることが1回できた期間で

これまでもアルバムごとにシドは新しい面を見せてくれてたと思うんですが、今作はその新しさが別次元まで振り切っちゃったなという印象なんです。
そうですね。いろいろなところで。
なんでここまで振り切れたんだと思います?
みんなの意識がすごい高かったんだと思いますね。自分たちがやってきた最大を出そうというところは今までのアルバムと変わりないんですが、やっぱりシドとしての活動がなかった時期は、個人個人がシドに対する想いとか、俯瞰でシドを見ることが1回できた期間で。たぶん、その期間に次にシドをやるときは「こうしてやろう、ああしてやろう」みたいな。そういう意識がすごい高い感じになってたからなんじゃないかなと思います。
つまり、間が空いていたからこその振り切れ具合であるとも言える。
そうですね。それによって、今まで当たり前にやってたことを改善することが出来たんですよ。例えばレコーディングのエンジニアさん。「この人とはずっとやってきて、やりやすいから」っていうのも込みで一緒にやってきたエンジニアさんがいるんですけども。その人以外を試そうっていうところもたぶん振り切れたところの1つじゃないかなと思うんです。いつもアルバムは全部同じエンジニアさんがやることが多いんですけども、今回のアルバムは全部で4人エンジニアさんがいるんですよ。
そこも、すごく振り切ったんですね。
はい。自分たち自身もそういう新鮮さ、新しい引き出しが欲しくて。ホント一個一個小っちゃなところから変えていって、今回のそういう新しい何かっていうものが出来上がっていった気がします。
シドの場合は曲の振り幅が広いからこそ、1人にお任せしてたんですよね? これまで。
うん、絶対そうですね。
でも、敢えて今回そこを踏み込んで変えてみようと思ったのは?
当たり前の安定感じゃないものに今だったら挑戦してやっていけるような気がしたんです。
それで曲調ごとに、向いてるエンジニアさんをはめ込んでいった。
そうです。大変でしたけどね。やっぱり時間は掛かるし、音のイメージを伝えるやり取りもこれまでとは違ったので。あとは今回、チューナーさんも入れてみたんですよ。それは2曲だけなんですけれども。
ちなみに、どの曲ですか?
「XYZ」と「躾」かな。たまたま新しいエンジニアさんから「このチューナーさんをおすすめします」的なところで名前が挙がってきたチューナーさんがいて。「試しにやってみよう」っていうところで入れてみたんですね。
それが「あー、こうすれば良かったんだ」っていうのが(チューナーさんを見てると)一目瞭然で
やってみてどうでしたか?
単純に「いい音になりました!」っていうだけじゃなく、すっごい勉強になりました。細かい話なんですけど、たとえば今まではエンジニアさんから「ここはもうちょっとドスッとローの部分だけ出ない?」って言われたら、自分で試行錯誤しながら全部やってたんですね。それが「あー、こうすれば良かったんだ」っていうのが(チューナーさんを見てると)一目瞭然で。俺なんかもう写真メッチャ撮りまくりましたからね(笑)。すごく勉強になったし、新鮮でした。
そういう細かい部分の新しい挑戦と、あとはなんといってもゆうやさんのアルバム曲!「低温」なんですけど。これ…よくみんなからGOを出しましたよね?
そうですよねぇ(微笑)。まずこの曲は、このアルバムにどんな感じの曲を入れるかっていうのをどんどん合わせていったとき「なんかひとつ、こんな感じの曲が足りないな」っていう話になって。「最後の一枠、ちょっとそれにちなんだ新しい曲を作ってこよっか。みんなで」みたいな感じになり。そこからけっこう……そうだな、全員曲書いたから3回ぐらいたぶん選曲会をやってて。この曲以外にも全然まったく別の感じの空気感の曲とかもあったんですよ。だけど結局「ん?」みたいな。「なんかやっぱり違うなー」みたいな感じになって。最終的にこれがハマった感じなんです。はい(笑)。
この曲がハマった理由は?
ある意味“パンチ力”ですよね。
パンチ力という意味では、やり過ぎ感も否めないぐらいのパンチ力持ってますからね。
そうそう(微笑)。そういう、とってもはみ出してる部分。そのいききった感が欲しかったんでしょうね。最後のワンピースとして。
こういうエレクトロのディープな曲調って、ゆうやさんのどこら辺にあるんですか?
いやなかったです(きっぱり)。俺には全然。
ははは! 素直なんだから(微笑)。
全然ないから、ホントこれに関してはもう、その……いっちばん最初に俺が考えて持ってったやつは全然違ったものなんですよ。で、第2回目の選曲会のあと、今までの作り方とかを変えないとみんなが求めるようなそんな異端な発想の曲には出来ないなと思って、俺、そこで曲の作り方自体を思いっきり変えたんですよ。それで、こんなのが出来ちゃった感じなんですけど(笑)。
「こんな歌があったら面白いなあ」って思ったのをメチャメチャ録っていって

じゃあこれ、どうやって作っていったんですか?
いやもーこれはね、マオくんのキーがどうこうとか、どういうイントロでとか、どういう楽器が流れててとか、どういう音像でとかっていうものを全部無視して。「こんな歌があったら面白いなあ」って思ったのをメチャメチャ録っていって。
自分で歌って?
うん。“ウワーッ”てだっるーい感じでずーっと全編歌ったものを何回も何回も聴いてちょっとずつ修正していったの。「あ、これちょっといいメロにいき過ぎてるな。ここは削ろう」とか。
いいメロディではなくて、だっるーい感じの歌が続いていくような曲を目指して?
そう! なんかノベーッとしてる感じで。だからこれ、Aメロのヴォーカルは「♪たーたらーたらーたらー」ってずーっと同じなんですよ。それがメチャクチャ面白いなと思って。ボソボソ言ってる独り言かのような曲。それに、あとから無理くり曲をつけて、無理くり後ろに音を当てて作りました。
え、じゃあゆうやさん、これメロから作ったってこと? こんなメロだけど(笑)。
はい。ボソボソ言いながらずぅーっと闇の中にいるイメージで。俺の中でもいいメロディとは思えないんですけども。
ぶはははは!
だからホントにもう、きっと作曲家が作るような作り方じゃないんだろうなあと思って。曲を作ったことがない人が一生懸命曲を作るときって、たぶんこんな感じになるのかなあ、みたいな。自分的には「あー、全然いいメロディじゃねえな」とか思いながら自分でブツブツ歌ってるんですよ。その感じが「すごい新しいな、俺!」と思って。